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□愚者の楽園へ 01-06
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愚者の楽園へ 06


 |エスケイピスト|01|
 :escapist

 

  [teller]
  ⇒ GINTOKI












橙色の世界だ。

小せぇパソコンの小せぇスクリーンの小せぇ四角い枠の中、 一杯に広がるオレンジ色。 知らない部屋。

潰れたパブかスナックか、 酒と姉チャンが似合いそうな内装。 壁に取り付けられた下手糞なアールデコ風間接照明のシェードから一部色ガラスが割れ落ちて、 点きそうも無い電球や配線が覗く。 暗色の合皮張りソファが幾つか。

半地下と思われる高い位置の、丸い舟窓擬(モド)きから差し込む斜光で、 鮮やかな濃い橙一色に染め上げられた部屋の夕景。


気怠く雑誌を捲る少女に向かい合って座る子がゆるりと振り向く。 二人の髪もデカい目もワントーンの光に反射して、 色が馴染んで、 双子の様に似た相貌に見える。 退廃的な映画みたいだ……



『なんか映画のワン・
 シーンみたいだー』



何かが溶け出してそうなオレンジ色の四角い世界で、 似合わねぇ明るい新八の声が言った。








謎は

幾日か前から始まる。




或る日、 家に帰ると、 中古のエアコンが空調してた。 どしたよコレ。 従業員は要らない家から貰った、 と言った。

或る日、 新八が新品のデジカメを持って来た。 くじ引きで当たったと言った。

或る日、 机の横に小さい中古パソコンが設置されてた。 あ、 そ。 コレも貰ったの、 ちゅーか近所から拾って来たんだろどーせ。

この辺の塵(ゴミ)、嫌にリサイクル全然オケッてのが混じってるじゃん。 調子乗ってあんま拾ってくんなー。

…て言ってた訳。



んで俺、 今コンピュータ触ってたらディスクトップの左下最端に『新八個人用』フォルダなんてのが。 思い切りパーソナリティのハザードに成りそうな名前付けてやがる。 見レ、 と言ってる様なもンじゃんか。

中に『デジカメ画像』ってのが在った。 幾つもの動画の中に、 見知った奴が見慣れない笑顔で映っている。 日付をチェック、 10日以上前のも在る。 ぅひょぇぇいつの間に…



……

ぁー


何か

解って来た気がする









電話が鳴る。

神楽だ。


ターゲット発見だって
でかしたじゃーん
んじゃ
俺も合流すっか。




メット持って
グローブ付けて
あ木刀木刀
ブーツのジップ
引き上げ
ゴーグル合わせ
ベスパのセル回して



ホイじゃま、
行きますか
…っと








¨

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