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□愚者の楽園へ 10-12
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愚者の楽園へ 11


 |ゼリー・フィッシュ|04|
 :jerry fish

 


  [teller]
  ⇒ YAMAZAKI












若い奴らの中にもイカレたフラワーを崇拝し、 自ら活動家に成りたがる奴も居て、 ソレはソレで何かちょっと気持ち解る。 正直ヨゴレはカッコいっス。 ただソレは、 非生産的で破滅的な何かに憧れちゃってるだけで、 思想を称賛してかっつーと大抵そーでもない。




俺の職場の奴らは、 そう言う話しをよくした。 女の話しもするし、 音楽の話しも芸能人の話しもする。 そんな一つとして江戸の事や、 天人や攘夷の話しもした。 世間からは力任せな馬鹿ばっかに思われがちだけど、(実際そうなんだけど) 政治的な動向や世情が生活に密着してる俺らは、 いつも世の中を見ていた。



だから
この事も知ってる



人の気持ちや考えは、
クラゲみたいに、
自分じゃ
気付かない内に
風潮の波に流され
啓蒙されて行く。

知らず知らずに。

何が正しくて
何が正義かとか、
誰が味方で
敵は何だとか、

美徳も
モラルも
常識も、

変わってく。



かつて江戸町民を救った英雄達は今やフラワー。 いつ何か政権の変わる出来事が起こって、 今度は自分達が戦犯扱いされっか解んねぇ…口に出さなくても俺の同僚は皆、 うっすら思ってた。



揺らがない物が有るとしたら、 ソレは実際の体験から得た考えだけだ。

綺麗事でも理想論でも無く、 目の当たりにした現実が焼き付けた考えは、 容易に変わらない。

あの当時、 侵略派の天人との政治的な駆け引きと攻防戦の中で、 味わった何かが消えず、 今も倒幕を訴えるフラワー達もきっとソレなんだろう。






俺が


実家の病院で
目の当たりにした
現実は



彼らの飛来によって
救われた人々







夭逝する宿業に
未来を与えたのは
侵略者の
医療技術だった


江戸の街の
急激な開発と
過度に進んだ文明が
現住種族の目には
ただ恐ろしい
妖怪の悪業に
見えてた頃にも

まだ天人と人が
各地で戦ってた頃にも


命を救う
高度な技術は
遠い星から来た
医師達によって
何年も掛けて
全国に
浸透してった







………かと思うと、 毎年何人かは、 天人の持ち込む質(タチ)の悪い宇宙風邪ウィルスの所為で死んでる。 天人の新薬で病が治り、 喜んでたら今度は、 宇宙風邪に掛かって死んじまう……なーんて事も有るワケよ。





 「……で、 」



そうそうコイツ、
俺の友人のコイツも
新医学に救われた
一人だ



「ソコから山崎が
 学んだ教訓
 ってェのが
 コレなんだろィ

“ 結局、 運。 ”」




 まーね

 結局何でも
 最後は

“ 運 ”っしょ




「 違ェねーや… 」











だから
たまには


祈ってしまう




流されて
変わってく
世の中の
行き着く先が
青い海であるように

















 -end-

 FOOL'S PARADICE
 11‖jerry fish




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