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□愚者の楽園へ 10-12
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愚者の楽園へ 12


 |フィギュア・アウト|01|
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  ⇒ SHINPACHI
















そっくりだと
言っていた。


ウチも道場だった、 今は使ってナイけど家にまだ建物残ってるよ、 と僕が言ったら友人達は見たがって一緒に着いて来た。 もう日が落ち庭は暗くて、 提灯と蚊取り豚を持って母屋隣りの道場へ。 いつの間にか錆掛けてた錠を開け、 僕も本当に久々に中に入った。 昼間でも最近入ってないのに、 夜に中を見るのはいつぶりなんだか思い出せない。

電気の通ってない道場の中は小さな提灯の照らす僅かな床板の他には闇だけで、 入り口近くに有ったオイル灯の埃を吹いて払って、 提灯の火を移した途端に、 ぱっと部屋の隅々天井の梁にもほの暗い黄色い灯りが行き渡った。 その時、 やっぱ僕と同じように道場やってる家で育ったって子が、 呟くみたいに囁くみたいに小さな声で、 そっくりだってそう言った。




その日は僕は特に仕事もなく暇だったんで万屋から早めに帰るトコで、 山崎さんと沖田さんは私服姿で、 後で聞いたら試衛館じゃない余所の講義受けた帰りだったそうで、 屯所に直ぐ帰んないでサボってバドミントンしてて、 楽しそうだったんでソレに混ぜて貰った。

散々山崎さんの羽裁きに走らされたけど(自分で言うのも何だけど)結構拾えたもンで夢中なっちゃって、 結局ずっとお邪魔して2つしかないラケットを3人で替わりばんこに使わせてしまった。

子供社会にはやがて大人に成った時にも役立つ、 集団における暗黙ルールなんかが有り“替わりばんこ”もそう言えばその代表的な一つだった、 と思い出し懐かしくなった。 銀さんや神楽ちゃんと居る間に、 忘れちってたよ…


羽がよく見えなくてふと気付くと、 会った時は夕方成り掛けぐらいだった空が知らない間にすっかり暗くなってて少し焦って、 昔もこんな事よくあったな…と、 また子供の頃を思い出す。


汗かいて喉カラカラで缶ジュース飲みながら3人で立ち話しして、 途中お腹空いて肉まん2個ずつとお菓子買って食べて、 山崎さんが焼き鳥屋で焼き鳥20本買ってくれて総ちゃんが缶ビール買ってくれて、 公園のテーブルで食べて、 話しは取り留めなく脱線してどーでもいい事で腹筋痛くなるぐらい笑い転げていつ迄も尽きなくて、 じゃーもーそろそろって、 言わなきゃいけないの解ってて、 でも誰も言い出さなくって……そんなのも何か懐かしかった。









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