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□愚者の楽園へ 13-15
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愚者の楽園へ 13


 |ルナ・モス|01|
 :luna moth

 

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  ⇒ KONDO












 “ トシの奴ぁ
   ホントに
   どーしょーも
   ねぇな ”



とか言われつつ、 人から嫌われない奴だった。


近所の豪農土方さんちの末息子は、 どうしょ───も無い奴だった。 笑える事から洒落にならん事迄、 数々の逸話を残した武蔵野のどヤンキーは、 こんな糞ド田舎には住めねぇとかって理由で卒中家出しては(奉公と言い張るが)金・女・飽きた・暴れた等のトラブルの末、 田舎に帰って来た。


それが何故か自分ちの大豪邸には帰らず、 いつもいつの間にか俺んちに居る。 大人数が好き勝手に住み込んでるのを良い事に門下生でも無ぇのにちゃっかり居る。


土方さんちもね、 ちょっと…ウンザリする程口煩ぇ時有んだけど、 トシの事を根っから疎んじちゃいなかったと思うんだ。 ただ『人から指図されるのが最も苦手』と言い切る奴には、 力だけが物言うウチの道場のが気楽な訳よ。 ガミガミ言う奴ぁいねーし……


で、 暫らく剣術修業なんかしてんだけどその内また、 友達が古着屋始めっから手伝うとか、 知り合いとDJバー出す事にしたから悪ぃ、 とか何とかで出てって、 暫らくするとまたウチで朝飯食ってる納豆混ぜてるマヨブレンドの。 飯の時間とか皆揃ってとか別に決まりないから、 かなり自然にいつの間にか居る。 そんなちゃらんぽらん伝説のブラザーだった。



喧嘩っ早い割にトシがぶちキレる原因は、 まぁ大抵は筋が通ってた……んだが奴が理不尽に苛めてた相手がただ一人居る。


まだ
小せぇ頃の
総悟だ



殆ど泣いた処を見た覚えが無い、 手の係らない子供がたまーに目赤く充血さしてる時は、 必ずトシの何じゃソレ? な阿呆らしい年甲斐のねぇ苛めが原因だった。









  [teller]
  ⇒ HIJIKATA







実兄の司令で行商に行かされた。 ふらっと入った店で酒運んでた女のコとイイ感じになっちまって、 売り上げ金も有る事だし…ってんでその儘二人で長旅へ。 2ヵ月間。 喧嘩ばっか。


金も底着いたんで女と別れ、 仕方無くしょーもねぇ地元に帰った。

街でタメに遇って言われた。 『オメ行方不明じゃねーの? 家の人が探してっぞ。 俺はまたどっかブチ込まれたのかと思ってたぜ』………マズい、 この儘戻れば俺と価値観の違う糞親族が、 行方不明者出現に鬼みてーに騒ぐだろう、 金は一体どうしたんだと。

面倒臭ぇ、 本宅(←竹馬の友の家の道場)に非難だな。 街から広い川伝いに歩き、 辺りが畑だらけになると見えて来る別宅(←実家)の屋敷森、 それと支流の小川を挟んだ対岸、 イカれた奴らが溜って大音量でレゲェばっか掛けてる本宅(←近藤道場)に向かう。








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