⊂day-to-day⊃

□ Tokyo Go-Go 1
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No.228
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東京ゴーゴー
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  東京ゴーゴー
  [#057] review

  










“Review”
“Little Magazine”


『レヴュー』とか『リルマガジン』って言うのは誰かの新しい想像力を掻き立てるのにとっても役立っているんじゃないかと思う。 レヴュー=リルマガジン=インディーズ的同人雑誌の事なんだけど、 そこでは別にどっかのクライアントに対して媚びを売らなくて良いし、 誰か偉い編集者の個人的な良い悪いの基準で顔色伺った部分を盛り込まなくても良いし、 まあ印刷の締め切りくらいは有るだろうけど、 じっくり良い作品作るため納得が行くまで詰めよっかと思ったら印刷担当の会社だか人だかに金払って頼み込んで押し押しにするって手まである。 ←金と仲間の理解が有ればの話だろうけど。 そんなステージが在るんだから、 エッ? と思うよな良い物が飛び出て来ないワケがない。

“作り手の好きに意見を言える・物を作れる”。 これは商業ベースのクリエイティブ産業にとっては大いなる脅威かもしれない。 誰にも縛られない自由意見と自由なスタイルの面白さが詰まってる新しいクリエイティブの場。 それは非営利のリルマガジンの他にブログやインディーズ中心の音楽活動にも言えるだろう。





先日新聞のテレビ欄を見てたら最近ある賞を受賞した作家のインタヴュー番組が載ってて、 残念ながら放送は見れなかったのだけど紹介欄によるとこんな内容だった。 「受賞作は登場人物がそれぞれ自らを語って物語を構成していくという手法で、 執筆中は登場人物になりきれるほどの入れ込みよう…」。 そのコメント読んで感じたんだ、 それってさ、 多くのリルマガジンで創作活動してる物書き達にとっては、 全然特別な事じゃないよね?

普段小説をほとんど読んだ事がなかった私が物を書き始める切っ掛けになったのも参考にしたのも同人ブログだったんだけど、 複数の登場人物が一人称で話を進めて、 それが一つの方向にちゃんと向く様にエピソードを積み上げるのはそれらの作品の最大の特徴だったんだよね。 ある登場人物の人生背景を理解し、 その人物の感じた事をその人の言葉で語ってくから、 その人物ならばこんな状況になったらどう感じるかって想像力が必要。 ソレ出来なかったら一人称で話を進める読み物なんて一文字も書けない。 当たり前なんだけどその登場人物は現実の自分とは全くの別人で、 創作した設定の中でその人物なりの観念を持つ他人だ。 だから「自分だったらこうするけどこの人の性格だったらこうなる、 こんな過去があるんだからこんなトラウマが派生し得る」…とプロファイリングする。 その作業には自分の人生経験以上の予測を織り込まなくては追い付かない。 その予測を張り巡らした上で、 登場人物本人だとしたらどう感じるか“自分に置き換えてシュミレーションした感覚”を文字に起こす。 その程度の作業は、 リルマガジンの多分恐ろしく若いであろう作家達ですら別に誰にも手法を細かく教わらなくても難なく遣り遂げている。 商業ベースの枠のない世界で物を作れるってのが、 商業ベースでは作り出せない新しい感性を発展させられる宝庫になったんだろう。





プロの世界だときっと、 創造者達を蘊蓄(ウンチク)攻めで遣り込める商売人達が、 商業ベースに則って何かを作り出す事が美徳で…。 金稼ぐのが一番の目的なんだから当たり前っちゃ当たり前だ。 金を回す立場の人間の意見が最重要だし、 どれだけ作品を大きく広告出来るかがヒットと密に関係する=作品による収入面に大きく関わる。 そこ無視したらその作品に絡んだ人間全てが大衆からの賛美の評価も得られなければ、 良い生活も出来ない。 賞賛とセレブリティな生活を得てこその一流クリエイター…って流れを勝手に作ってるのもクリエイティヴ産業家達なんだよね。

でもそれ行き過ぎると、 なんか嫌だなそんなの。 って思うクリエイターの人達が現れてくるだろうね。 結構そう言う人達が作った物の方が人の心に染みたりするかも。

名声はいざ知らず、 金はどんなに稼いだ所で死んだら使えないし。 一週間暇があったとして自家用ジェットで世界一周するのが楽しいか、 一週間日々の暮らしに和んで例えば料理なんかしてるのが楽しいか…人それぞれだしね。 どっちかと言えば何かの作品を読む見る聴く人の多くは、 自家用ジェットにも何台もの高級車にも興味はない。 それでも人間らしいエゴや優しさや色々な普通の感情を持っている人達だ。 そうゆう普通の感覚が消えるのが、 大衆受けを狙う創造産業家にとっては致命的だろうね。





こないだ大ヒットした映画『DREAM GIRLS』 を観た。 これは70年代の米音楽業界の裏事情が舞台のミュージカル。 ジャマイカの音楽界を描いた『ONE LOVE』も観た。 話の筋は全く違うけどどちらにも、 メジャーがインディーズから歌をパクってオリジナルのインディーズを潰そうとして失敗するエピソードが絡んでる。 映画上では潰したいターゲットをパクる様に命令してるのはたった一人のエラい人で、 表立って作品を世に出したアーティストはその裏事情をよくは知らない。 こう言う不正って本当に有りそうじゃん。 パンッと(映画と同じメディア産業でもある)音楽業界裏事情を批判し、 スカッと汚い権力を押し退けたエンディングは観終わって気分良い。 こう言った作品を世に出してくれるクリエイター達もちゃんと存在するんだね。 (余談だけど目を見張る程美しいビヨンセはオセロの中島に似ている)





インディーズにしろメジャーにしろ世に発表した物ならば、 その“誰かが考えた何か”は、 アマチュアもプロも関係なくそれを観た人間に何らかの影響を及ぼす。 それは良い事だ。 (だからと言って誰かが考えた何か良い物を盗むために未発表物を違法行為駆使して搾取しまくる闇々ストーカー業界班みたいのはナシね絶対ナシね)

今回のジャンクコラムを書いてて使用した「どんなに稼いだって金は死んだら使えない」って言葉は、 深夜テレビ点けてたら香港の裏路地をただタラタラ歩く良い感じの番組をやってて、 その中で、 九龍の古い床屋の店内で客が床屋の主人に語ってた言葉だ。 とても心に残り、 いつか文章を書く時にそんな台詞を誰かに言わせたいなって思った。 そう言う思いから文章を書き始める人、 文章に限らず何か物を作り出そうと思い立つ人もいるだろう。





誰にでも発表の場を与えられた現代、 インディーズ界には尚一層プロを唸らす新しい何かが詰まってる。 でもってインディーズ達はいつでも大衆に向け流される偉大なプロ達の創った作品から影響を受けてる。 誰かが世に送り出した何かを観てそれに触発され、 影響を受け、 違う誰かが違う作品を創る……そこで生まれた新しい何かを観てまた誰かが何かを創り出すヒントを得、 何かを産み出したいと感じる、 その力の輪が創作者達を動かして行く。 それは良い事だ。

















Oct.16th.'07


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