創作小説

□最愛のアナタに捧ぐ
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プロローグ



夜更け…
子どもの泣き声に深哉(シンヤ)は慌てて起き上がった。ベッドから降りて、近くの椅子にかかっていたカーディガンを肩にかけ、寝室を後にする。
泣き声のする方へと足早にかけ、そして子ども部屋の前へ止まると静かにドアを開けた。
「誓(セイ)、また怖い夢を見たの?」
中にいる小さな女の子に優しく問うと女の子・誓は小さく頷いた。
そんな誓を抱きしめて宥めるように頭を撫でてやると誓は堰を切らしたように再び泣き始める。
「パパっ!」
「ゴメンね。パパも一緒に眠ればよかったね。」
誓は深哉の子どもである。深哉が二十歳で誕生した誓はもう五歳になった。
母は、いない。
「パパがねママみたいにいなくなっちゃう夢を見たの!だからセイ怖くて…」
申し訳なさそうに告げるわが子に深哉は囁いた。
「パパはどこにも行かないよ。だから、安心してお眠りなさい。」
そうすると安心したのか徐々に眠りかけ、十分もすれば完全に寝付いてしまったのだった。
「誓、ゴメンね。寂しい思いをさせて。…もうすぐだからね。」
そう、もうすぐ…もうすぐ運命のときが訪れる。
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