創作小説

□咲かない花
1ページ/5ページ

貴女の影に


私はいつも


隠れてて


ずっと


咲かない花なんです








咲かない花








最近、姉の帰りが遅い。
これが咲崎万里(サキザキバンリ)の今の悩みだ。
高校にあがってから部活に所属していない姉は部活に所属している自分よりも早く帰ってくる。
なのに、ココ最近。
ずっと帰りが遅くなった。
年頃だから…と母は言うけれど、万里は幼い頃から一緒にいたためか嫉妬心が先走る。
周りからは姉に依存しすぎだ、とかそんなんだからいつまでも甘ったれだとか言われるけど万里にとって、それほどに姉は大きな存在なのだ。
リビングでテレビを見ながら大きなため息をついた。早く帰ってこないかなぁ、という願望が叶ったかのようにドアが閉まる音がした。
音を聴いた瞬間に、万里は立ち上がると両親が呆れた声を上げるのを無視して玄関まで走る。
やはり、そこには姉の姿。
「おかえりなさい!蓮霞ちゃん。」
目を輝かせてそういうと、姉・蓮霞は優しく笑って「ただいま」と返事を返してくれる。
「ねぇ、ご飯は?」
「いらないって言ったよ。食べてくるからって。」
「お部屋に行くの?」
「課題片付けないといけないからね。」
「万里も行って良い?」
「うん、良いよ。」
蓮霞は苦笑しながら応える。
誕生日こそ離れているものの実際学年は同じなのに、どうしてこうまで甘ったれなのか、本当に不思議になる。
そんな万里が可愛いと思いながらもこのままではいけないんじゃないかと思ったりもする。
母にもよく言われるのだ。
「少しは突き放しなさい。このままじゃ一生アンタのお荷物よ?」
言われていることも分からないわけでもない。
しようとしてないわけじゃない。
それでも、万里の泣きそうな顔を見るとどうしてもダメなのだ。可哀想で…
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ