創作小説

□声の限りに愛の詩を
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君は


僕の為に


声が枯れるまで


愛の詩を


唄ってくれたね





声の限りに愛の詩を







「さっきも言ったとおり、この書類はシュレッダーにかけて、こっちは十部ずつコピー。この案件については各学年委員に応えはNOだけど、詳しい事を文書で報告すると伝えておいて。スポーツ大会については吉澤に全て委任してあるからそっちにまわして。あと文化祭実行委員長に先程の事は正式な文書でこちらにまわすようにと伝えておく事。これくらい、一度で覚えてね。そうしないと、生徒会役員は務まらないよ?」
雨宮学園生徒会長・雨宮青(アマミヤアオ)は、にこやかなけれども嫌味な表情でそういった。
怒られた役員の一人は雑務として今年入ってきたばかりの一年生だ。名前は、確か佐藤有紀といったか。今にも泣きそうになっている事に気づき、青は頭を抱えた。
また一言多かったらしい。
いつもならあまりしないミスを忙しいときに限って連発する有紀に苛立ちを隠せなかったのは、自分の器が小さいからだ。
この学園には、教師の立場というものがあまりない。学園は理事会と生徒会によって運営されているのだ。ただし、理事会は生徒の自主性を尊重すると言って、金だけ生徒会に渡し、後は生徒会任せなのでとにかく仕事が多い。
そして、六月に近くなると行事が重なってくるため一番忙しい時期に入るのだ。
だから、余計な時間のロスはしていられない。
青は大きくため息をついた。
その瞬間有紀の目から大粒の涙が溢れ出す。
「会長、後俺が処理するんで。こいつ外出してやってもいいですか?」
書記で有紀と同じ一年の横嶋真左がそう言うと青は頷いた。
使えないものは使わない。
それが青のスタイルだった。
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