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□あいしてる
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『あれだよね。
悟浄って、あちこちで“好きだー”とか“愛してるー”とか言い触らしてそう』



何処の町だったかなんざ忘れた。
4日振りの町だってーのに、気分は最悪。

いつもなら八戒と張れるくらい上戸な鵺依が、何故か焼酎1杯で酔った。
其処から俺バッシングが始まった。



『きっと手ぇ握ったら妊娠する』
「…何でだよ。」
『八戒は紳士だし、悟空は優しいのに』
「なら三蔵は何だよ?」
『三蔵に至っては、男とか女とか境目無いから』



真顔でそんな事を言われれば、やっぱり自分がチャラいって事なのか。と、変に納得させられる。



「いや!鵺依に変なことしてねぇだろ!」
『………』
「え、何その目。」
『疑いの目』
「いや、だから…」
『初対面でナンパされかけた。』
「それはー…」



酒で、少し赤くなった顔を手で扇ぎながら、白けた視線を送ってくる。

…てゆーかよ。
ナンパは罪か?



『どうせ今、ナンパは罪か、なんてふざけた事考えてるんだよ』
「あぁ、確かにありそうですね」



――…因みに三蔵と悟空は隣の部屋で寝ている。今日ばかりは三蔵が羨ましい。



『罪っていうか…ねぇ?』
「そうですね」
「…何でこんな責められなきゃなんねぇのよ」
「日頃の行い、ですよ」



八戒は全く酔った様子もない。ひたすら鵺依の言う事に笑って頷いてるだけだ。



「……これいつまで続くんだよ」
「鵺依の気が治まるまででしょうか」
「だから、俺が何したんだっつーの!」

『じゃぁさ、悟浄、』



急に優しく笑んで、手招きする。



「……なに。」
『こっちこっち』



向かい側に座っていた俺を隣に座るよう手招きする。
まさかこれでセクハラとか叫ばれたらどうすんだ。立ち直れねぇ自信がある。



「隣に座れば良いのか?」
『うん。』



何故か満足そうに鵺依は笑う。



『悟浄、』



かと思えば、急に真面目な顔して。



「な、何…」








『あいしてる。』








……何の罰ゲームだ。



ニヤリと笑った鵺依と八戒が見えた…気がした。











  
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