A

□くろと
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「あれ?黒刀くん」
「夕月…」
「どうしたんですか?」




今日は休日。
けれど、雨が降っていて。




「…外を、眺めていた」
「――あ、雨止みましたね!」
「いや、」




嬉しそうに答えた夕月に、黒刀はもごもごと口を動かせた。




「――?」
「ほら、向こうの…」
「え?」
「そっちじゃない」




2階の通路。
少し歩けば、バルコニーがある。
黒刀は夕月の手を引き、バルコニーに出た。

そして、ずっと向こうを指差す。




「虹が…出てるんだ」
「本当だ…!綺麗ですね!」
「あぁ。これを、」





――これを、

 夕月に見せたかった。





朝から続いた雨は止み、空は青く晴れて、うっすらと出た虹。

ただ、それだけの事だけれど、いつもは見れない其れ。


ほんの少しの間。

それをキレイだと、
キミといっしょに…




「いっしょに、」
「――え?」

「いっしょに見れて嬉しいです。黒刀くん」




いっしょに見て、

キミの笑顔が、見たかった。




「…そうだな」





その笑顔があれば、


もう、それだけで。














  

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