A

□参
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花は散るものだけど、そんな事よりも咲いてる時を憶えていたかった。





『綺麗ですね』
「…ん、あーそうだな」
『嫌いですか?』
「別に」



桜を見て“きれい”という言葉を使った事がない。実際、思った事ないから尚更。



『僕、思うんです』
「何をだよ?」
『桜みたいに人を喜ばせて、感動を与えられたらって』



ほんの少し、涙混じりの声。

今回は自信がある。
俺のせいじゃ、ない。



「急にどうしたんだよ」
『桜は僕達に優しいなって』



誰を重ねているのか。
誰を想っているのか。

誰を…守りたいのか。



「夕月、」
『…はい』
「バカなこと言ってんな」
『………』
「守るのは、俺らだ」



桜なんて下らねぇ。
何十年何百年も生き続けてるとか、そんなの知らねぇけど、俺達のがぜってぇ上だ。
ずっとずっと…数なんかで表すよりずっと、大切に想ってきたんだ。




「――冷えてきたな。中に入ろうぜ」

『あ…焔椎真くん!』
「…ん?」
『焔椎真くんも、優しいです』



夜、桜見ながら酒呑むのが最高だとか何とか。
大人達はバカみてぇな事で楽しそうにしてた。

けど、桜を口実にして良いなら、俺だって。



「…当たり前だろ」
『え?』
「お前をずっと想ってたんだからな」

『――はい』



ずっと、想ってる。
















サクラの花言葉
心の美しさ
精神の美


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