A

□伍
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私と同じ名前の、花が咲いた。






「これが桜…」
「すげぇな」



この国に、東のある国から寄贈品が届いた。



『桜…の木だね』



昔見た桜の木は、あの世界を映していたようだった。
咲く花は小さく、色も薄汚れた桃色。
何百年も生きる筈の桜は…その姿を微塵も感じなくて、細く、今にも倒れてしまいそうだった。

でも、ここに咲く花は…



「綺麗だね!」
「あぁ」



共にいる人達は、



「な、サクラ」



温かくて、優しい。



『――うん、そうだね』



戦いは終わらない。
きっと大切な人を亡くした寂しさを消す事は出来ない。

それでも、桜の咲く、東のとある国に訪れる季節は…いつも決まった時期にある季節が来て、過ぎていく。



『…見せたかったなぁ』
「……中佐にか?」
『うん、ヒューズさんに…見て欲しかった』



桜がこんなに綺麗なものと知らなかった。
きっと、これは…私があの国に生まれた唯一の、誇り。



『私の、誇り』



…ただの木。
でも、私よりも強くて逞しくて誇り高い。



「サクラ、」
『…ん?』
「僕や兄さんは、知ってるよ」
『…なにが?』



――…憧れる。



「サクラがどんなに優しいか」
「どんなに強いか」
「ヒューズ中佐も知ってるよ」
『…そうかな』
「知らない訳ないだろ」



ヒューズさん、

…ヒューズさんに見て欲しかった。



『…聞いたんだけど、』
「「?」」
『桜って、もう散る時期なんだって』
「そうなんだ」

『また…来年、来れるかな』
「3人で?」
『うん』

「当たり前だろ」
「もちろんだよ!」



いつか、この桜のように、強くなれるかな。









  

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