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□伝われ、この想い
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ありがとう、と伝えたかったんだよ。







『はい、これ。』
「……?」
『あげる』
「俺にくれんの?」
『うん』


某お店のロゴが入った包装紙。
自分で包み直す気も、ましてや自分で何かを作る気も無くて。


「この店って、」
『残念ながらチョコじゃありません。』


そう言うと、悟浄は笑った。


「でも嬉しいモンだぜ」


中身は、クッキー。
包装紙を開けて、早速食べていた。

とりあえず、嫌がられてはない筈。


『ありがとうって言いたくて』


決して、恋では無いんだよ。
だけど…それ以上の価値のある言葉だと思うんだ。

恋じゃないから、ずっと一緒にいられる。互いを守ろうとせずにいられる。
旅を続けていられるんだと思う。


「そっか」


誰か、なんて関係ない。

“私”は、ありがとうの言葉がいちばん大切な人達に伝えたい言葉。


『悟浄、』
「ん?」
『三蔵達にはあげてないんだよ』


どうか…

どうか、伝わって。
この想い。


「……なぁ、」
『なに?』
「来月、何か返した方がいいかぁ?」


代わりに欲しいものは、
欲しい、ものは……


『いつもみたく近くにいてくれたら、それで良い』


何も無い。
存在だけで良い。

ずっと傍にいてさえくれれば。







恋、じゃないけれど、

愛してるよ。











  
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