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□居眠り
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「十瑚ちゃん?」
「わっ、九十九!」
「こんな所で何してるの?」



黄昏館。
日曜日の正午過ぎ。

1階のリビングでは十瑚が何やら挙動不審に辺りを見回していた。



「しーっ!」
「え…?」



寄ってくる九十九に、静かに来るようにと人差し指を口に持ってきた。
不思議そうにゆっくりと歩いていけば、納得。



「昼寝、かな」
「ね。今日はあったかいし、最近は生活も落ち着いてるから」



ソファーには夕月とソドム。
その向かい側には黒刀と千紫郎まで。
手元やテーブルに食器だとか本が無い所を見ると、皆で話をしていて、寝てしまったのだろうか。



「――うん。確かに」
「え?」
「これは眺めてたくなるね。十瑚ちゃんの挙動不審も納得がいく」
「ちっ違うわよ!何か掛けるものを持ってこようかと思ってて、」



でも、この光景はなかなか離れがたかった。




「――あれ?」



弁解になってないような弁解をしようとしていると、リビングの入り口からは愁生。その後ろには焔椎真までいる。



「「愁生、焔椎真?」」



2人の手にはブランケット。
焔椎真は嫌々だが、ちきんと4人分ある。



「6月と言っても、まだ冷えるからね」
「さすが愁生」
「私も持ってこようとしてたのよっ。九十九!」
「うん」
「…信じてないわね」



愁生は焔椎真からブランケットを受け取ると、4人にそっと掛けてやる。



「んう〜…」



夕月に寄り掛かるようにして寝ていたソドムはピクリと耳を動かし、ゆっくりと目を開けた。



「あ。起きちゃった」
「あれ?ボク、」



寝てたの?
そう口にしようとすると、目の前にいた愁生達が揃って口に人差し指をやった。



「ん…?」



身を預けていた相手、夕月はまだ眠っている。
先程まで話していた筈の黒刀と千紫郎もだ。



「まだそこにいてあげて」
「夕月ちゃん、まだ寝せといてあげよう?」



自分にも掛かっているブランケット。
口元までそれを引っ張り上げると、静かに頷いた。



「また後でね」



優しく笑う十瑚と九十九。
愁生と焔椎真だって、優しそう。

何だかそれを見てるだけで、あったかい何かに包まれてる気分になれた。



「ふふ。ホカホカ。」



さっきよりも少し夕月に近付いて、ソドムはまた目を閉じた。










  
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