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□空に咲く花
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「ねぇ、九十九」
「どうしたの?十瑚ちゃん」
「最近…夕月ちゃん元気無いわよね」
「…そうだね」


夏の終わり。
まだ厳しい残暑があるものの、空や風は少しずつ変わってきていた。
夏のような青空と、少し違う。
夏のような空気とも違う。

これが秋の始まりなのか、と。


「俺達に出来る事は無いのかな」
「千紫郎、」
「大丈夫ですよ。俺達より適任が直ぐ傍にいるから。な?焔椎真」
「あぁ」

「…それでもやはり見てる事しか出来ないのは、」
「そうだね、黒刀。やっぱり、辛い…よね」


夏が終わってしまう。
別に、それだけ。
なのに、どうしてなんだろう。
凄く寂しい気持ちになるのは。


「だからって湿っぽいのも鬱陶しいよな」
「焔椎真、」
「何かすげぇ嫌だけどさ、あいつに任せとけば大丈夫だって気がすんだ。だから、俺達は待ってれば良いんだ」


日が落ちるのが、ほんの少し、早くなった。
ちょっと前までは、この時間ならまだ明るかったのに。


「だろ?愁生!」
「――あぁ、そうだな」


ギュッと手を握る九十九と十瑚、
触れるくらい近くにいる愁生と焔椎真、
細い黒刀の肩にそっと手を置く千紫郎

そして、6人は静かに目を閉じた。



きっと大丈夫。

あの人は独りじゃないから。









  
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