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□意味あるもの
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『三蔵?』



久しぶりの宿。

それは、イコール食事と風呂も。



『――珍し。』



夕飯まで少し時間があった為、必要なものの買い出しに出た。
相変わらず自由人な鵺依達は、お菓子だ酒だ煙草だと勝手な行動ばかり。

昼過ぎにはこの町に着いていた筈なのに、宿に戻ってきた時には、少し湿っぽいような空気になっていた。


そうなる事を分かっていたのか、三蔵はひとり留守番。
嫌ってほど満喫したのではないだろうか。それと同時に…少しくらい物足りなさを感じれば良い。



『三蔵ー、』



そんな事を考えながら、鵺依は駆け足気味で帰ってきた。



『……満喫中か。』



そんな事は、まったく無かったようだが。



『なぁんだ。』



三蔵は椅子に座ったまま、腕を組み、小難しそうな顔で寝ている。
フと、テーブルに目をやると、


『どんだけ。』


山のような煙草の吸殻。



『……うーん、』



そっと手を伸ばし、無造作に置かれた煙草とライターを取る。

葉巻は吸った事があった。
祖父の犀から、今みたいにして、悪戯に。


……吸えたものじゃなかった。

煙いし、喉に異物のようなものが通り過ぎ、肺に何か溜まる感じ。暫くしても、においが取れない。




何より、一族の想いばかり蘇る。





『――…まっず。』


「盗んどいて言う台詞か、お前」
『たった1本でしょ』



失礼な感想で起きたのか、それよりも前に起きていたのか、鵺依を正面から睨む。



「ふざけんな」
『だって、本当に美味しくないんだもん』






――…大丈夫だろうか。



三蔵の顔を、正面から見て、
沸き上がってきた…

不安。



――もし、


…もし何かが起きて、離れ離れになっても。






「――不細工な面だな。」



大丈夫だろうか。



『三蔵の寝顔よりマシ。』



いつか、必ず別れる。

けれど…何かを見る度に、想い出せる、想い出してもらえる…そんな風になれているだろうか。






  
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