NARUTO

□宝石
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○月×日
きのう、きれいな石をひろいました。
すべすべしてて、みどりで、とうめいでした。あしたせんせいに見せたいと思います。


「なーに、可愛い日記だねえ」

「あ、ちょ、カカシってば」

洗濯物をたたんでる横で雑誌を読んでたカカシが、突然ぬっと手を伸ばした。
その手の先には上述の通り、私の受け持ち生徒の日記があったわけで。

「小さい子の担任になると毎日こんな日記書かせてるの?」

「んー、まあ」

「自分の仕事増えない?オレは無理」

「私もコメント思いつかないときとか後悔するけど、読んでて楽しい日記もたくさんあるよ」

「上忍に書かせたら毎日殺人日記になりそー」

「いえてる」


そうだね、可愛い日記は小さいうちしか書いてもらえない。
大きくなったらそう、嫌なものばっかり見ちゃう、気付いちゃう。


「なんで日記書かせてるの?」

「んー、日々の生活になにか見つけるっていう能力を見につけてほしいから?」

「うわすごい優等生みたいな答え」

「まあ色々かな」

「ふーん?」


飽きたのか、雑誌にまた戻ったカカシ。
話は行き先を見失って、カカシは雑誌へ、私は洗濯物をたたむ作業に戻った。


「ねー」

「ん?」

「カカシは日記つけてる?」

「つけてない、残しちゃいかんデショ」

「そっかあ」


そしてまた、話は暗闇へ。


そう、だ。
私が受け持ってる子達もいつかはいなくなるかもしれない。
だからこそ私は日記を書かせている。
せめて、小さいうちだけでもと。
残された身としてはなんでもいいから縋りたいのだ。
その子が残した服や本、日記でもなんでもいいのだ。
私はいつの間にか、親の目線で子供たちをみていたんだな。


「まー、忍としてはなにか残すわけにいかんけど」

「ん?」

「あ、話の続きね」

「うん」

「一緒にすごしたことを覚えててくれたらそれだけでおなかいっぱいだよ」

「…良いこと言ってるのになんだか台無しだよ」

「いいのいいの」

そしてまた私たちはお互いの作業に没頭する。
話は暗闇、だけどこの日常はまぎれもなく宝石。






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