DEATHNOTE

□雨降り、
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雨の日は空気が澄む、と教えてくれたのは。


ワタリだったような
夜神 月だったような
いや、松田だったような



(しとしと
 ぴちゃぴちゃ
 ざあざあ
雨は、色んな擬音を持っている。そのどれもで、自分を表している。まるで、沢山の探偵を演じている竜崎みたい)



一人暮らし、借りている部屋の中から降りしきる雨を見て、私はそう思った。
いい年をした女が、なんて乙女チックな
そう、自虐も込めて。
手の中にある、さっき雨の中買いに走ったコンビニのプリン。あまり進まない食指。


「竜崎から離れたいわけじゃない、ただちょっと、一人になりたい」


そんな言葉を発したのは2週間も前だった。
竜崎の恋人、で居ていいのか
こんな女より、もっと可愛い、素直で、申し分の無い女がきっと竜崎には居る。
そんな自己卑下と勝手な被害妄想から発した。
そりゃあもちろん引き留めてくれないかな、そうしたらきっと少し自信がつく(愛されてる自信?笑っちゃうね)って思わないわけじゃなかった。

でも竜崎はいつも通り
そうですね、お互い一人になる時間も必要ですね、なんて。じめじめした私を嫌うかのようなさらっとした言い方だった。
私の薄い膜に張ったずるい考えをその探偵の目で見通したから?それとも本当に一人になりたかった?ねえそれとも

「別の女…」

うそうそうそ
いやだ
だいたい多忙そうな(そうは見えない)竜崎に
あんなぼさぼさ頭な竜崎に(でもそれが可愛い)

「無理。ぜっったい無理」

ああ一人言が増えちゃう
前はこんな一人言でも拾ってくれる人が居たのに。
借りている1Kの狭い部屋が広く見えるのも
目の前のコンビニデザートがなんとなくおいしくないのも
もう全部竜崎のせい



ああもう
プリンのカップで少し冷えた指先で、メールを打つ。

「いまから行くね、ごめんね」

あ、やばい。どきどきしてきた。
だいたいこんなメール勝手だ。

間髪いれずにメール返信なんて珍しい。
ちょっと携帯が滑ったのは指先が冷たいせいだ。

「遅いです。雨だから迎えにいきます」

「ありがとう。でもいいいよ。だって、雨あがったみたいだから」


外は、いつのまにか雨が上がってさらっとした空気を運んでいた。






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