モノ置き場

□セツナイコトバ
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「おい」

誰かが声をかけてきた。

またファンだかなんだか知らないがそのたぐいなのかと振り替えると、そこにはアサズキとリョウコがたっていた。

「なにやってんだ有名人」

アサズキがリョウコのようなことを言う。・・いや、リョウコが前にアサズキのようなことを言ったのか。

リョウコはいつもアサズキと一緒にいたから。

そう思うと不意に胸が痛くなった。

欠けた肋骨ではない。

それよりももう少し上だ。しかしその痛みの理由が、俺は分からなかった。



夜。


少しの生き物を残して全てが眠りにつく宵の時。

また今日も真夜中に目が覚める。

最近はこれが続くのだが、何故眠れないのかがアイズ自身にも分からないので全く改善されないのだ。

それでも、今まで余り寝ていなかったからか、起きるのもつらくまともに座れもしない。

「(めんどくさいな・・・)」

それでも、朝まで時間があるので良かったが・・・



しばらく時が流れる。

またうとうとしていたアイズが目を覚ました。

「(リョウコ・・・?)」

夢うつつの中、亮子の夢を見た気がした。

不意に、胸がざわつく。

しかしその理由も何も分からなかった。

「なんなんだ・・・?」

声に出してみるが、ここには「なんだかんだと聞かれたら」などと答える間抜けな某悪役などが居るはずもなく、つぶやきはそのままため息と一緒に流される。

そのとき、小さな胡蝶が窓枠にとまっていることに気がついた。

「(蝶・・?)」

普通に見ても分からないほど闇にとけこんでいる。

アゲハ蝶のようだ。

その蝶に誘われるようにして、アイズはホテルの外に歩き出した。



だるい。

余り寝ていないせいか、公園まで歩いてきた俺の第一声は其れだった。

座るところもないので、周りを見渡して一番座りやすそうなブランコに腰掛けた。



「おい」

座り込んでいると、声がした。

俺をいらつかせるような、安心させるような人の声。

「なにをやってるんだ?」

人は、買い物袋を持ちながらそう尋ねた。



「なるほどな」

亮子は、ここにいる理由を亮子に尋ねて帰ってきた返答に頷く。

「蝶に誘われてきたって事か」

そう言うと立ち上がった。

「ラザフォード。もう帰った方がいいぞ。私はあんたと話に来たワケじゃないしもうすぐ夜も明ける。あんたも帰った方がいいだろう?もうすぐ夜明けだ。」

紫色に染まりかけた空を見て言い放った。

「じゃあな」

と。



そのあと俺はしばらく公園を廻ってからかえることにした。

さっきの言葉が胸に痛みを持たせたことにより、何故眠れないのかが分かった気がしたからだ。

どうやら俺は、リョウコのことが“好き”らしい。

思いっきり拒否されたが・・・



伝わることのない言葉を抱いたまま、また時は流れていく。




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