空は高い。ヒトの手が触れることのないように。
高く飛びすぎたコトリが、悲しみに触れることのないように。 sora 「考えたコトがあるか?」
唐突に、亮子が口を開いた。
目の前には、最近何故か一緒に居ることの多くなった銀髪の青年が一人。
「何がだ?」
青年−アイズ=ラザフォードが聞き返した。
「空が高い理由だよ。青い色がいくら近くに見えても、触るコトなんてできないだろ?」
亮子が答えた。
「空が高い理由・・?」
アイズは、亮子が急に空を見上げてぼぉっとしていた理由が分かった。
それを考えていたのだ。
そしてしばらく沈黙が続く。
「理由・・・か。」
アイズが突然、つぶやくように云った。
「其れは・・・」
言おうとしたアイズに、亮子が一言言い放った。
「難しいことはナシだぞ」と。
「難しいのは、嫌いだ」
そしてまたしばらく時間がたった。
「神の領域に人が踏み込まぬように、と言うことか?」
アイズがつぶやくように言った。
「私も始めはそう思ったさ。・・だとしたら『神』の対になるモノはいったい何なんだ?」
「・・・さあな。悪魔とかか?」
「違うと思うよ。悪魔と対になるモノは天使だと思うから。・・・それに、」
「それに?」
「悪魔は一体どこに住んでるんだ?」
「・・・さぁな・・・」
「そんなことを考えてたら分かんなくなってたんだよ。なにが善でなにが悪か、なんてこと。それと『神』なんて野郎が本当に正しいか、なんてな。」
「?」
「それ以前に『神』なんて存在するのか、とな。」
「神・・?」
アイズが、いぶかしげに亮子を見た。しかし亮子はそんなことは気にもとめずに、先を続けた。
「清隆だよ。彼奴も始めはただの人間でしか無かったんだろ?」
「ああ、そういうことか。」
亮子の言っていることが分かったのか、アイズはフッと微笑った。
「そもそも俺達に救いなど存在するのか、だろ?」
アイズは亮子に聞いた。
「そうだよ。・・どうせあいつのシナリオには私らを救う、なんてモン入って無いんだろ?」
「・・・・・」
アイズは答えなかった。
かわりに、また少し微笑った。
そして、ボソっといった。
「さあな」
そしてまたどちらも話さない沈黙が続く。
開いていた窓から風が入った。
「リョウコ。紅茶でも飲むか?」
アイズが尋ねた。
「ん、ああ。 入れるの手伝おうか?」
「ああ」
カーテンが風で翻り、暖かな光が射し込んだ。
「まぶし・・・」
亮子が上を仰ぎながら部屋を出る。
そしてついさっきアイズが歩いていった方へと歩いていた。
「
あいつの事なんて大嫌いだったハズなのにな」
___亮子の誰にも聞かれないつぶやきを1つ、のこしたまま。
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