はるかぐお題

□先輩と後輩
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【先輩と後輩】





授業終了と共に教室を飛び出てグラウンドへ行く。
榛名は部室の扉を勢い良く開けて一目散に制服を脱ぎ始めた。
一番に着替えて一番にグラウンドに出るのが榛名の日課になっていた。
いや、日課というよりは習慣と言った方が正しいだろう。
脱いだ制服をロッカーに押し込めたところで、勢い良く扉が開いた。

「ちーっす!…って榛名、やっぱり負けたか」

今日こそ一番だと思ったのに…と悔しそうに顔を歪めたのは榛名より一つ年上の加具山直人だった。

「俺は負けませんよ」

にっこり榛名が笑うと、「うっせーよ」と負け惜しみに加具山は毒付き、軽く榛名の尻を蹴った。

「何故かいつもお前に負けるんだよなあ…」

ぶつぶつと不満そうに言う加具山に榛名は自慢気に言った。

「ホームルーム終わったらダッシュで来るんですよ」
「してるし…」

うーん、と榛名が考え込むと何を思ったのか、突然加具山は顔を真っ赤にして怒鳴った。

「今、俺のが足速いから負けるのは当たり前だろ、とか考えただろ!」

加具山の予期せぬ科白に榛名が変な声を出すと、加具山は拍車が掛かった様にマイナス思考を更にヒートアップさせ恨めしそうな顔で榛名を睨んでいた。

「か、考えてないっすよ!」
「嘘付け!」
「本当っすよ!あ、あれっすよ、あれ!俺の教室昇降口に近いから!」

必死に榛名が言葉を絞り出すと、それが上手く行ったようで加具山は納得したように「ああ」と声を上げた。

「そっかー」
「そうっすよ」

加具山が落ち着きを取り戻したところで榛名はほっと息を吐いた。

「じゃ、先グラウンド整備してますね」
「おお、頼んだ」

加具山の声を後ろで聞き部室をあとにした榛名は誰よりも早くグランドに出た。
今日も練習が始まる。
緊張と喜びにどきどきと早まる心臓を押さえ、榛名はトンボを手に土を均し始めた。




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