はるかぐお題

□お前生意気なんだよ!
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一つ年下の後輩。
名前は榛名元希。
正直言って生意気だと思う。





【お前生意気なんだよ!】





真っ青な空に陽が昇り、透き通った水色に姿を変えた。
気持ちの良い朝の登校時間。
冷たい空気が肌を引き締めさせる。
マフラーを口元まで持っていき寒さをしのぎ、ポケットに手を突っ込み中に入っているホッカイロで温まる。
ああ、寒い。

「かっぐやまさーん!!!」

大声で名前を呼ばれ、その後すぐに衝撃。
大きな身体にぶつかられてよろめくが、すでに大きな腕が身体に回ってきていて、こけるのだけは阻止された。
手はポケットの中にあり両手が塞がっていたので、もしこけていたら顔面からコンクリートとご対面だった。
俺は危なかったと身を固くした。

「お前なあ!」

危ないじゃねえか、と勢いよく振り返ると、体当たりしてきた本人は俺が思ったとおり、幸せそうな顔した榛名元希だった。

「今日も可愛いですね、加具山さん」
「可愛いじゃねえよ…あとちょっとで俺の顔が地面とコンニチワだったぞ!」
「俺の加具山さんの顔に傷が付くなんて、許せねえ」
「お前が抱きついてこなきゃそんな心配ないんだよ!!」

はあ、と溜息を吐く。
というか、俺の加具山さん、って何だよ…。
ちらりと榛名の顔を盗み見ると、でれでれという形容が当てはまる榛名の情けない顔が見えた。
こいつ本当に俺のことなめてるな。
そう思うとイライラしてきた。

「いい加減俺を離せ」

榛名の腕から早く抜け出したくて、榛名の胸を押し返す。
すると榛名はそれに反発するように余計に腕の力を強くした。

「おい!」
「あとちょっと」
「お前…俺のことなめすぎだぞ」

出来うる限り低い声を出し榛名を脅すが、これっぽっちも効果はない。

「なめてませんよ、加具山さん可愛いです」

にっこりと微笑まれる。
その笑顔に俺の中での劣等感が溢れてくる。
先輩に向かって可愛いとはなんだ!
本当にありえん!!

「…十分なめてんじゃねえか!」

俺の右手が榛名のあごに決まる。
ウィナー俺。
榛名は「ひどいっす」と先ほどまで俺を抱き締めていた手で顎を押さえている。

「お前生意気なんだよ!もうするんじゃねえぞ」

俺はそれを捨て科白に、榛名を置き去りにして早足に学校へ向かう。
っま、これにこりて榛名も反省しただろう。
ほっと一息ついて、俺は鼻歌交じりに校門をくぐった。





「…ここ皆の通学路なんだけどな」

ちょうど通りかかった秋丸がそう漏らした声は加具山にも榛名にも届かなかった。



end.

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