パロ部屋
□華乱*
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【華乱】
大きな真っ白の外装に灰色の瓦屋根が特徴の大きな建物。
通称城。
ここにはこの世で一番尊いといわれている天皇と手を結び、平和な世の中を築いていこうと約束を交わした偉大な将軍が住んでいる。
その城内の一角。
畳がずらりと敷き並べられた広間のような大きな場所に、貫禄のある一人の男が姿勢良く正座をしていた。
「失意礼します」
障子を隔て若い声がする。
中に入ってきたのは、白い肌のいやに整った顔立ちの男だった。
貫禄のある男は優男を視界に捉えると、ふんわりと優しく微笑んだ。
「慎吾、よく来たな」
慎吾と呼ばれた役者面の男は恐縮し、頭を低く下げた。
「今日お前を呼んだのは他でもない」
「毅彦様のことですよね、和さん」
慎吾はにやりと不敵に微笑んだ。
和と呼ばれた男、和己は「さすが慎吾は何でもお見通しだな」と目を丸くして喜んだ。
「あなたは本当に顔に出る」
和己は恥ずかしそうに頭を掻いた。
「まあ、分かっているのなら話は早い。
あの男、なんと言ったかな」
「はて…圭輔、のことでございましょうか?」
そうそう、と和己は満足げに笑う。
「毅彦様がご寵愛なさっているとか」
「はい、とても仲睦まじくいらっしゃいます」
和己は慎吾の笑顔をぴしゃりと跳ね返した。
「男の側室など今までと何も変わらないではないか」
厳しい口調に慎吾の肩が驚きにびくりと揺れる。
「…この間、縁談を薦めてから毅彦様の様子がおかしかったと思ったら、いきなり男を連れ出してきて『こいつを側室にする』などと言い出して…
何の冗談かと思ったら、…男を愛するなど…大事な将軍が奇病にかかられ、私は頭が痛い
早くお世継ぎを作らなければ…毅彦様に何かあってからでは困るんだぞ
すぐに次の者を!」
和己はそう捲くし立て、ぴしゃりと言い放った。
「…とお偉い方に言われてな」
かっかっか、と和己は笑う。
慎吾は曖昧に頷き「さようですか」と返した。
「俺も大変なんだ」
「ご苦労様で」
和己は大袈裟に溜息を吐いた。
「まあ、すぐに、と言っても無理なことくらい分かっておるが…何か心当たりはないか?」
「ふうむ」
慎吾はわざとらしく考え込む素振りを見せてから、口角を異様に上げて不敵に微笑んでみせた。
「実は一人…」
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