目を伏せたときに落ちる睫毛の濃い影が白い頬とは対照的で、この人はなんて綺麗なんだろうと思った。

「準さん寝てるの?」

そう声を掛けても、目を開く気配がしない。
柔らかく単調な呼吸だけが聞こえた。





【放課後ランデブー/利準】





「今日さー先生に呼び出されてて、帰るの遅くなるから先帰ってて」
白い息を吐きながら言うと、隣を歩いている準さんは小さく頷いた。
マフラーから出た鼻と耳が赤い。
今日は冬一番の寒さだって天気予報で言ってたな、と思い出した。
「バカだから?」
「は?」
準さんの言いたいことが分からなくて、大袈裟に聞き返すと、めんどくさそうにこちらに視線を寄越した。
察しろとでもいいたそうな目。
どうも空気が読めない利央でごめんなさいね。
「呼び出し」
「ああ、ううん、なんかよくわかんないけど」
「ふーん」
準さんは興味を失ったようで、視線をアスファルトに向けた。





先生の長いお話を適当に流し、荷物が置いてある教室へ戻った。
(先生話長すぎだっつーの)
ぐだぐだぐだぐだ…結局何が言いたかったのか、馬鹿な俺には理解できなかった。
「あ、」
教室のドアが開いていて、あれと思いつつ入ると、人影があった。
「準さん?」
机に突っ伏して動かない。
静かに近付くと、やっぱり準さんだった。
先帰ってて、って言ったのにと思いつつも、待っていてくれたことが嬉しい。
射抜くような鋭い瞳は閉じられ、いつもより子供っぽい顔。
(可愛い)
へらっと頬が緩むのが分かる。
「寝てるの?」
もう一度問いかけるが返事はない。
(…無防備)
ちょっとくらいいいよね。
腰を折って、準さんの頬に唇を落とす。
どきどきした。
柔らかい頬が俺の唇を押し返した。
(なんか良い匂いするし)
髪を優しく撫でる。
さらさら指の間から抜け落ちる。
(綺麗)
俺にはもったいないくらい。
誘われるようにもう一度頬に唇を落とすと、後頭部をがしと掴まれた。
「!?」
そのまま唇を重ねられた。
「準さん起きてたの!?」
「俺は寝てるなんて一言も言ってねえ」
「まあそうだけど…」
準さんは意地悪に笑う。
「利央、拗ねんなよ」
首に細い腕が回ってきて今度は俺から唇を重ねた。
「拗ねてねえよ」
「嘘つき」
くっくっと笑う準さんは楽しそうだ。
先ほどまで準さんが座っていた椅子に腰掛け、その上に向かい合うように準さんが座る。
なんかいやらしいなと思った。
夢中でキスを繰り返すと、だんだん大胆になってくる。
準さんの口腔に舌を差し込むと、答えるように絡まってきた。
「ふっ、う、」
準さんの薄い唇から熱い吐息が漏れる。
頭がぽーっとしてきた。
「準さん色っぽい」
唇が離れて、俺がそう漏らすと、準さんは赤く染まった頬を押さえて、
「馬鹿、帰るぞ」
と俺の太ももの上から降りた。
そうですかおあずけですか。
準さんの腰に回していた手が悲しい。
「はーい」
慌てて荷物を持ち、先に歩き始めている準さんの隣に並ぶ。
「!」
「ひ、人がくるまでだから」
きゅ、と握ってくる手が愛しい。
俺はうんと何度も首を縦に振った。


end.


ありがとうございました!!
これからも日々精進。
頑張って行きます!

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ものもうす!



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