青年と少年シリーズ

□ある少年と青年の会話
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ある少年と青年の会話


少年 「人間って変だと思いませんか?」

青年 「どうして?」

少年 「理由は沢山あるんですけど・・・」

青年 「とりあえず、適当に言ってご覧」

少年 「鳥や栗鼠が死んでいるのを見たら、可哀想って言う人は多いですよね。でも、そういう人が台所に出る虫を気色悪って何の罪悪感もなく殺しちゃうじゃないですか。それって変じゃありませんか?」

青年 「人っていうのはね、命に差を付けるんだ。だから誰かを必要以上に大切にできて、何かを信じられないぐらいに呆気なく壊してしまう」

少年 「それって変だと思います。他の動物は生きるために殺すけど、それ以外では何も殺さないですよね。でも人間は、大切な者は自分が死んでも殺さないのにそれ以外は大した理由もなく殺しちゃう」

青年 「よく、自分が生きるために誰かを殺すことを残酷というけど、殺せない事の方が残酷なのかもしれないね」

少年 「・・・よくテレビに出てくる“正義の味方”っているじゃないですか?」

青年 「ああ、あれね。うん、僕もあれは変だと思うよ(苦笑)」

少年 「やっぱりそうですよね」

青年 「人間を餌にする怪物に『なんて悪い奴だ。成敗してやる!!』とかって言う正義の味方が、ステーキが好物だったりするんだよね。クスクス」

少年 「あれって、何かの冗談なんですか?」

青年 「う〜ん、子供向けの番組でそんなブラックジョークはないと思うけど・・・」

少年 「え、真面目にやってるんですか!?」

青年 「多分ね」

少年 「やっぱり変です」

青年 「仲間意識が強いんだよ。大切なモノとそうでないモノの区別を、すごくはっきりとつける」

少年 「それってすごく自分勝手だと思います。大切でないモノの大切なモノは意味もなく奪うのに、自分の大切なモノは死んでも守ろうとする。こんなの人間だけです」

青年 「人間はすごく幸せな生き物だよ。自分以外を大切にして、愛し守ることができるんだから。でも、同時にすごく不幸な生き物なんだ。大切なモノを失うと、絶望して生きていけなくなる」

少年 「先生は人間をどう思ってるんですか?」

青年 「まあ、変だとは思うけどね。でも僕は嫌いじゃないよ」

少年 「好きなんですか」

青年 「好きってわけでもないかな。というか、まだどっちかわからないんだ。それは“結果”を見て決めるよ」

少年 「結果?」

青年 「人間がこれからどうなるかどうか。自らの業で結局大切なモノを全て失ってしまうか、大切なモノを守るためには他のモノも大切にしないといけないことに気付いて、改めるか」

少年 「好きになれるといいですね」

青年 「うん、そうだね」

 FIN.

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