笛!夢

□その他笛メンバー夢
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君を好きな気持ちはこんなにも溢れているのに、俺は臆病にもそれを隠して君の前で道化になる。



    -Pierrot-



初夏が訪れた休日の午後、青々と晴れた空の中で強烈に輝いている太陽の陽射しが、屋内の壁を容赦なく焼いていく。どれほど暑くなっても未だ冷房が入る事はなく、その熱を耐えるしかなかった。ただでさえも鬱陶しいこの夏日に、更にそれを助長するような光景が、今俺の目の前で繰り広げられていた。

「亮、暑いんだけど」
「煩えな。俺だって暑ぃよ」
「クーラー入れようよクーラー」
「あーもう煩ぇっつうの。つうか寄るな、暑っ苦しい」

本当に暑苦しい光景だった。この暑さの中で、サッカー部のマネージャーである##NAME1##は三上にしがみついて足をばたつかせながら、しつこく駄々をこねていた。──もっとも、俺が苛立っている理由は他にある事を自分ではよく分かっていた。

「ちょっとぉ、##NAME1##ったらぁ!私のみかみんに近付かないでちょうだいっ」
「お前その呼び方止めねえと殴るぞ。大体気持ち悪いんだよ」
「まぁ酷いわ、私と貴方の仲じゃないの」

わざとらしい女言葉でふざけながら2人に近寄る。別にそんな言葉を使う必要性はない。俺達は皆サッカー部に所属し、全員とある程度は親しいのだから。寧ろこんな風に振る舞う方が明らかに不自然だ。

──それでも、俺にはこうするしかできない。

三上と##NAME1##の2人に関わると、必ず2人の間の特別な空気を感じる。何とか##NAME1##と関わろうと奮闘しても、結局はその雰囲気の前に独り立ち尽くすのだ。自分を情けなく思い、蔑みながらもそれを悟られぬように、だらしなく笑いながら手を上げた。その瞬間、その手が空で止まる。

「亮に近付かないでっ」

少し怒ったような表情で、##NAME1##が俺の腕を掴んでいた。俺が三上をからかう度に彼女は怒り、俺を目の敵にする。彼女は明らかに三上を好いていて、サッカー部内でもまだ正式に付き合っていない三上と##NAME1##の関係は、恋愛を話題にする時には必ず挙がった。

「何よ、鈴ったら。みかみんは渡さないわよ」
「だめ───っ!!」

俺が一歩足を踏み出すと、鈴は思い切り三上の腹にしがみつく。その行動に、思いがけない程の衝撃を受けて返す言葉も行動もなく、鈴が三上を連れて部屋を走り去るのを呆然と見送る事しかできなかった。
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