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□ためらい
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「また来てたのお前?」
任務前のいつもの俺の決まり…あの日から任務に行く前には必ず挨拶してく……アイツと一緒に任務をする為。
「…そっちこそ毎回お参りっすか?」
声を掛けられたのは墓に行った帰り…今から任務に行こうとした時。
いつもの胡散臭い目を向けられて足を止める。
「相変わらず連れないねお前は」
「なんか用っすか?カカシ先生も今日任務っすよね?」
グズグズしてっとまたナルトやサクラにどやされますよ…なんて言えば
「…もう2時間遅刻なんだよ。だから幾ら遅れても地獄は決定なんだけどね〜ι」
最近力の付いたサクラのフルボッコはカカシ先生も相当応えるみたいで少し冷や汗を垂らして言う………だったら遅刻しなきゃいいのに…
「…ついつい時間が経つの忘れちゃうんだよね………お前も気を付けた方がいいよ?」
「俺は別に………」
別にアスマの墓の前で何考えるでもなくただのんびり…いつも縁側で将棋打ってたときみたいにただ………
「…俺はただアスマと一緒に任務に行くだけっすから」
いつもみたいにアスマと会話してるだけ……だから。
「………お前…どうしてまだ…そんな悲しそうな顔するの?」
いつもみたいにやる気ない顔のつもりだったのに…胸が痛い…アスマが居ないと何もできない…したくない。
「…いつもこんな顔っすよ」
カカシ先生から目を反らせて顔を俯ける。
「…いつも…か。前はもっと良い顔してたよお前。ま、忍びとしてなら今の方が良い顔かもね」
ニッコリ目だけ笑ったカカシ先生に俯いた顎に手を掛けて持ち上げられてまじまじと見られる…顔…近いっての!!!!
「っ俺っっ…任務、なんで失礼します」
気恥ずかしくなって手を払いのけながら回れ右して走ろうとしたら今度は腕を掴まれて、その反動でよろけた所を胸で受け止められた………つかこれは抱き締められてる?
「…………ぇと…あの………カカシ先生?」
こんな風に抱き締められたのいつぶりだろ……俺よりデカイ腕…胸…落ち着くけど落ち着かない。
だってアスマじゃないから。
「…俺だってアスマが逝っちゃって寂しいんだよ?久しぶりに出来た話の分かる奴だったしね」
─もう仲間なんていらないと思っていた所にズカズカ入り込んで来たのがアスマだった…人と関わるのも嫌だったのを変えたのもアスマだった─
ボソボソ耳元で囁くみたいに言われてくすぐったくて身を捩る俺を羽交い締めにしたままカカシ先生は続ける。
「……復讐なんて悲しいだけだから止めろなんて言ってた俺がお前たちに付き添ったのは何でだと思う?」
「……放っとくと暁が里に来て危険だから?俺たちだけじゃ不安だし…」
「ま、それもあるけど第一はアスマが殺されて奴らが憎かったから……それにお前も護らなきゃアスマに面目立たないでしょ?」
そんな感情がまだ自分に残ってるなんてね─
背中から肩に顔をうずめられててカカシ先生の顔は見えなかったけど…
「…俺が死んでれば良かった…アスマは玉があったのに…顔も見る前に逝くなんて……」
「……お前が死んでた方がアスマは辛かったんだよ。」
「でも俺よりアスマの方が玉…子供たちを守れる……俺じゃ全然ダメだ」
力弱いし……こんな悲しい思いするなら自分が死んでれば良かった。
「…まだ気付かないの?アスマが一番護りたかったのは紅との子供でも里の子供達でもなくお前だよ」
「そんな訳ないっ!!だってアスマは玉はこれからを担う里の子供達だって!!」
バッとカカシ先生を突き放して向き合う………あ、やべぇ…涙出てきた。もう泣かないって決めたのに。
「お前頭良いけどバカだね………お前はまだ子供だよ。これからの里を担っていく…」
─目の前のお前を一番に護りたいに決まってる
だからお前に託してアスマは犠牲になったんだろ?──
目の前が真っ暗になる。苦しい…立ってられなくなると支えるみたいにカカシ先生に目一杯抱き締められる。
泣きはらして気まずい目を上げるとカカシ先生が
「…二人で任務遅刻だね」
なんて呑気に笑って見せてくれた。
2010.10.23.