□healing and reward
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あまりに咄嗟のことだったので抱きしめられた拍子にさっき斬られた所が痛んだ。

お腹を反射的に抑えるが、ばれてはいけない事を思い出すとさっと手を離した。

しかしこの行動でこいつにばれないわけもなく



「黒崎サン?・・・まさか」

そういった後すぐさま制服の釦に手をかけられ一気に上半身を晒されてしまった。

包帯で巻かれた傷口もばればれで・・・。

「いや、これはそのー・・大した事ないんだよ、ほんと
に・・」

と言う位しか出来ず。

それでも厳しい表情が解けない男にどうしたものかと考えあぐねていると

「・・!ちょっ、浦原?」

突然包帯を取り払い始めた男に制止の声をかける。

止めようとしたが軽く払いのけられ傷口が露になる。

俺からしたら軽く斬り付けられた程度に見えるが普通の人から見れば結構深いのかも、しれない。

一層厳しい表情のまま暫くそれを凝視する男。

「えーと・・」

言葉に詰まりそれ以上何も言えないでいると



「この傷知ってるのって誰がいます?」

突拍子もないことを聞いてくる浦原。

「?チャドだけだけど・・・?(後は喧嘩売ってきた奴等)」

「じゃ大丈夫ッスね」

「何が・・・・

?」

「治しても特に問題ないなと」

「いやいやいや、いいよ!俺の不注意だし」

「アタシが嫌なんで」


身勝手節炸裂。


「・・・・・・はぁ」

こう言ったら引くわけもなくこれ以上何を言っても意味
がない。

諦めたのがわかったのか早速鬼道でその深い傷を治し始める。

すっかり後もなくなり、上手いもんだなといつものように感心していると

「折角綺麗な肌なのに跡なんて残せません」


・・・・・・。


「いや、綺麗じゃないだろ・・・どう見たって」

既に斬り傷だらけだし・・・これ以上増えてもあんま大
差ないと思うのだが男は考えが違うらしい。



「これ以上傷が付くなんて耐えられませんから」



さいですか・・怒りを通り越して呆れが混じる。

はたと気付くと傷を治される序に腕を掴まれていた。

そしていつの間にか眼前にある男の顔。動けない。後ろに体が引けない。

思わず目を見開いて声を荒らげようとしたが一呼吸遅かった。


「んっ・・・!」


腕を動かしたいが力では見事に敵わず悔しさが込み上げてくる。

口唇を放されてもすぐに言葉は発せられず荒い息ばかり。

いつもの三倍増しの不機嫌な表情で睨み付

けると

「これ位いいじゃないスか、治療代ッスよ」

と飄々とした態度で淡々と告げる。


「ふ、ざけんな!」


やっと開放された腕を早速振り上げるが、かわされた上
にまた捕まってしまった。

顔を真っ赤にして怒ってもアタシを煽るだけって何回言えばわかるんスかね、この子は。




ほんとに素直なんだから。



「さて、傷も治ったことだし、差し障りもないでしょう、続きしましょうか」

「軽く言うな軽く!!」

「えーそんなこと言っても逃がしませんよ」

がっしりと掴まれてしまった腕。あぁ、何で振り上げてしまったんだろうと後悔するも遅く。

自分の体が畳に沈んでいくのをただ抵抗も出来ずに見守るしかなかった。




fin.2005.9.9

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