話
□蝕む月とそれから
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時々依存し過ぎている自分に気がつく。別れるという言葉は自分の中にないし、だからこそ今告げられた言葉も理解出来ない。
もうやめよう、って。
酷く首を絞められているような苦しそうな表情でそう呟いた彼。何でそんなにも辛い顔をするのだろう、わからない。
俺のこと、嫌いなんだろう?
次に来た言葉も何故彼がそう思うのかわからない。真逆だ。好きすぎて依存症の自覚があるほどなのに、何故彼は嫌いだと言うのか。問いかけると好きなら何で何もしてくれないのか、と。
確かに彼から告白されて3ヶ月位になるが特に自分は彼に何もしていない。
ただ学校帰りに、何時も通り彼がやってきておやつを食べながら今日会ったことを話す。
それから夜も自分から彼の部屋に行ってまた話す。夕方の少しの時間だけじゃ足りない、満たされないから。
まさか彼がそんなに思い詰めていたなんて。いつの間に大人になってしまったのだろう。触れない理由なんて決まっている。一度触れれば止まらない。エスカレートしていく自分が見えるから。依存症が完璧な形になってしまうから。
彼はそれを聞いて顔を赤く染めながらゆっくりと口を開いた。
俺だってもうお前に十分蝕まれてる。
だから苦しいんだ。
ぽすんとそう言った後もたれかかってくる彼をそっと抱き締め、髪を梳く。くすぐったいのか身を捩る。そのまま手を滑らせ、顎を持ち上げ軽くキスをすると、どこかでパリンと音がした気がした。その音は自分の中からかもしれないし、愛しい子の中から聞こえたのかもしれない。
でもそんなこともうどうでもよかった。