□来訪者。
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来訪者。


風邪を引いた。

でも非情にも明日から期末テスト。

とりあえず一通り勉強はしてきたつもりだったので今日一日やらなくても大したことにはならないとは思うが

それでも最後の確認だけはしないと、と思い、昼間は妹たちが邪魔して

出来なかったので夜中にやることになり

現在夜中の3時。

いつもだったら学校に行って、普通に"あそこ"に寄って門限前に帰り、

確認して早々に寝るつもりだったのだ。

そう、今日は会えなかった。

それから、知らせる程大変な状況ではないのであいつにも知らせてない。

仕方ないかと思い、また教科書に目を落とす。

薬を飲んで一日安静にしていたとはいえ、やはりすぐ治るわけではなく、

まだ頭の奥が痛む。

その痛みに耐えつつ確認作業。数式を思い出し解いていく。

ふと強い風が吹いた。

窓は夜は寒いからと妹が閉めてくれたはず。

しかし窓は開いていた。

疑問を残しつつ閉めるため立ち上がる、とその時頭に激痛が走った。

「ッ・・・!」

必然的に前に倒れそうになった。

しかし倒れることは無かった。

「!」

痛いながらも倒れなか

ったことに多少混乱する、がすぐにその意味はわかった。

倒れる前にこいつが支えてくれたから。

「コンバンハ、黒崎サン」

「浦原?何で・・・」

いつの間に入ったのだろう、窓が開いていたのもそのせいか・・

「今日来なかったでしょう?で、風邪引いてるって聞いたから」

「・・・誰から?」

「さて、誰でしょう?」

いつもの意地悪な笑みをされて少しむっとしたが今は頭が痛いので

あまり怒る気になれなかった。

「で、一体何しに来たんだよ、今、夜中だけど」

「黒崎サンに会いに」

「・・・・・・それ、だけ?」

「そ」

「・・・帰れ」

そういって殴ろうとしたがさらりとかわされまた少しむっとした表情をする。

「酷いっ、心配して見に来たっていうのに」

「もう平気だよ」

「さっき倒れかけておいてそれは無いでしょう」

「あれは落ちた消しゴムを拾おうと」

「落ちて無かったですけど」

「・・・・・・・」

こいつにはこんな嘘なんて通じる相手ではなかったが反論せずにはいられない・・

結局このように完膚なきまでに抑え込まれてしまうのだけど。

「無理しないで

下さい」

そっと彼の顔を見ると酷く心配していることがよくわかる表情をしていた。

「・・・うん」

「そうと決まったら今日はもう寝てくださいね」

頷くしかやっぱり出来なかった。

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