□繋がり。
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繋がり

「う〜ん・・・・・」

さっきからこの言葉ばかり後ろから聞こえてくる。

アタシはちょっとやらなければいけないことがあるので後ろの子に構ってやれない。

でも先程からこの悩んでいるらしい言葉が気になって後ろを振り返った。

目に入るのはオレンジの髪の可愛い子供とその子が持っている銀色の曲がりくねった輪。

「黒崎さん何してるんスか、さっきから」

声をかけてようやくこちらが振り向いてるのに気が付いて「ああ」と言ってから

「さっきジン太が来てこれ置いてったんだよ、暇ならこれでも取ってみろとか言って」

と見せるのはさっきの銀色の輪、知恵の輪。

「あぁ、知恵の輪ねぇ・・」

「俺こんなのやったことないからなかなか取れなくてさ・・」

とまた眉間の皺を深くして何とか取ろうと試行錯誤を再開する。

その輪をよく見てみると対称でまるで離れたくないかのように必死に抵抗しているように見えた。

「・・・・・・」

あまりにそれを凝視してたのか

「何?お前取れるの?」

と子供に問われた。

自分からしたらそんな輪などいとも容易く取れるだろう。しかし

「何か取っちゃうの

勿体無いなぁ・・・」

「は?」

「いや、だって折角くっついてるんだし」

「イヤ、知恵の輪って何とか考えて輪を外す遊びなんだろ?」

「まぁそうなんですけどね、何か見てたら私と一護さんみたいで」

クスクスと笑うと訝しげにその知恵の輪と自分を交互に見て更に眉間の皺を増やした。

「ま、たかが知恵の輪ですけどね」

そんなもの取れたからといってアタシと一護さんは同じようにはならない、いやさせない。

意味深な言葉だけ残してまたアタシは仕事を続ける。

その間も後ろから唸り声とそれを動かす音が聞こえる。

きっとこの後根を上げていつの間にか眠るに違いない。

音と声が聞こえなくなったらまた振り向こう。そう考えて今は机に向かった。



fin. 2005.7.10


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