□問い掛け。
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問い掛け。


「なぁ」

「ん?何ですか、黒崎サン」

何時も通り浦原商店に寄り道し何をするわけでもなく門限まで居座る日々。

話す事も他愛もない事。

「もし死ぬ時一つだけ持っていけたら、何を持っていく?」

「ソウルソサエティには何にも持っていけませんよ、残念ながら」

予想していた答えが返ってきて溜息をひとつ。夢もへったくれもねぇのなと思いつつ

「いや、そうじゃなくて・・もしもの話だから」

もしも持っていくとしたらと続けると

「それはもちろん・・・」

と呟いた後いつの間にやら眼前まで顔があって後退さろうとするが

腕を掴まれ其れ以上後ろへ行くのを許されないまま言葉が続いた。

「あなたですよ」

突然低い声になった為目が見開く。何を言われたか理解し始めると顔が熱くなった。

その上細まった目で痛いほど視線を受けたので見つめ続けるのに耐えられず視線を逸らす。

「黒崎サンは?」

そこで話が終わると思っていた為まともな答えを用意していなかった。

うーんと考えあぐねてふと思いついたように浮いていた視線を戻した。

「記憶、かな」

「ソサエティには死ぬ前の

記憶はありますけどねぇ」

「だからもしもだって・・」

「アタシって言ってくれないんですか?」

「・・・どうせ」

そこで言葉に詰まり顔が下に傾いた。

覗き込んで見るとさっきより赤くなった顔があった。

「お前が連れてってくれるだろ」

だから俺が望まなくたって・・と続いた。

なんて可愛い事言うんデショ。つまりそれは連れてっても構わないと言ってるようなものだ。

「モチロン」

それを肯定すると傾いていた頭が少し揺れた。

「でも死ぬなんて縁起でもない話やめてくださいね、まだアナタにはやるべきことがあるでしょう?」

勝手に消えられてはこちらが困る。大事なお得意様なんですしと茶化すと何時も通り鉄拳が飛んできた。

アナタはまだまだ死なせませんよ、死んだとしてもアタシは行くべき所に行かせるつもりもないですから。

絶対に捕まえて離さない。

例え嫌だと言っても。

そんな事を考えてるとは露知らず、照れ隠しにテッサイが持ってきたお茶菓子を食べている彼。

今日も愛しい。

明日もこれからもずっと、永遠に愛しい存在。



fin.2005.8.2


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