話
□important lover
1ページ/2ページ
important lover
宿題を逸早く片付ける為黙々と教科書とノートを交互に睨めっこしている時いつもの砕けた声がかかった。
「ねぇねぇ黒崎サン買い物一緒に行きません?テッサイに頼まれちゃって」
「一人で行って来い」
「つ、冷たいっ」
大袈裟によよよとその場に崩れ落ちる馬鹿を見て溜息を一つ。心の中では
(何でこんな奴好きなんだろう・・・)
と思っていた。常々考えていることでもあるけど。
「・・・・わかったよ」
そう言った瞬間泣き崩れていた体は元通りになりうきうきしている。
「そんなに嬉しいか?」
「黒崎サンとデートできるようなもんですしねー」
「・・・・」
たかが買い物でデート・・・
しかし横で嬉しそうにしている様子を見て自分もつられ笑いしてしまった。
スーパーに着き、テッサイに渡されたメモを見ながら着実に買い物を進めていく。
はっきり言ってもしこの店主だけに行かせていたら余計なものを買いすぎて予算オーバーは免れなかっただろう。
何故なら少し歩くたびにあれいいなとかやれいいとか言ってはかごに投げ入れようとしているから。
俺が行
くのを前提で頼んだなあの人。
一通り妨害はありつつもメモの通りの買い物を済ませ、後は帰るのみ。
「黒崎サンってほんとしっかりしてますよね〜」
「お前はほんとに生活能力の欠片もねぇのな」
「褒めたのに貶し言葉で返された・・・・」
また横で気持ち悪い泣き真似をする。
それでなくても周りはこの二人って何、みたいな視線がさっきから痛かったというのに・・
この上気持ち悪い真似事までされてはさらに視線も痛くなるわけで‥
それもいつもの事なのでそれほど気にならなくなったのだけど。
そんな馬鹿馬鹿しい話をしながら帰り道を行くと見知った人物が前から歩いてきた。