□A promise
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A promise

何か一護さんが冷たい。

読書の秋だからとか言って本ばかり読んでちっとも構ってくれない。

何かアタシしましたっけ。


・・・思い当たる節がありすぎてどれを言えばいいんだか。

とりあえずその思い当たるもの全て言ってみるがどれも違うらしい。

眉一つ動かさず、こっちを見ようともせず、淡々と本を読み進めていく。

こうなったら強行手段しかない訳で。

早速腕を伸ばした、のだけど軽くかわされ本を持ったまま距離を置かれてしまった。


近付くとその分離れていく。何だかじれったくなったので逃げる暇を与えず一気に近寄り抱きすくめた。

暴れもがいている手やら足やらが邪魔なので、大人しくさせる為口付けを落とす。

次第に静かになった所でさて本題。

どうしたのと問えばぷいと顔を背かれ、口を一文字にきゅっと結び、いやでも言わないつもりの様子。

自分で考えろ、とその顔が物語っている。

でも思い当たった事は全てさっき言ったし、思いつかないものは思いつかない。

だから聞いてるのに。

「ねぇ、いい加減こっちを向いてくださいよ」

無視。

「考えたけど思いつかないんですってば」

無視。

「何か

一言くらい言ってくれてもいいんじゃないスか
〜?」



「・・・・・・ばか。」

一言とは言ったけどそんな言葉は望んでいない。

全く頑固なのは父譲りか。


はぁと自分が一つ溜息をつくと

やっとこっちを向き、

「何でわかんないんだよ」

と。

その顔は何だか切なげで。そんな顔させるような酷い事
をしただろうかと

必死に頭を巡らせる。

考えている自分を見て、やはりわからない様子を見て取
ると

今度は一護が溜息一つ落とし、

「昨日来るって言ったくせに・・・・」

「え?」



昨日来る・・?


もしかして。


余りに自分の中で思い付いた出来事が意外だったので

つい口に出してしまった。

「あれ、本気にしてたの?」

「・・・・冗談だったのかよ」

「いや、だってねぇ・・・嫌がってたし」




「・・・ほんとかと思って待ってたのに」

ぼそっと呟く彼の顔は真っ赤。


昨日の事、とは。
まず一昨日から。


いつもの午後。

突然彼が言いずらそうに話を切り出してきた。

「なぁ、明日ちょっと寄れないから」

そう言うと残念そうな表情をして俯く。

何かあるんですか?と問えば、文化祭の準備

とかで遅くなるらしい。

それじゃあ仕方ないと返すと、何だか納得の行かない様子の彼。

どうしたの?と顔を覗き込めば、こっちを一瞥してまた視線を下に戻す。

そして聞こえるか聞こえないか位の小さな声で

「だって・・・・明日会えないと思って・・」

全く突然こういう可愛いことを言ってくれる。

きょとんとしかけてすぐに企み顔に戻し、ホント冗談のつもりで言ったのだ。

「じゃあ明日の夜お邪魔しに行っちゃいましょうかネ」

「な・・・いいよ、そんな・・て、いうかどうせ窓から来るんだろ!コンとかにばれると後が大変だし」

「えー・・仕方ないなぁ・・」

じゃあ明日は我慢しますか〜、明後日覚悟してくださいねと続けるとばか!と一言浴びせられ思い切り蹴られた(痛い)


で、昨日今日とアタシはここで話は終了していたとして
もうすっかり今の今まで言われるまで忘れていたわけで。

黒崎サンは昨日夜遅くまでアタシを待っていて、嫌と言っても来ると思っていたらしい。


悪い事しちゃいましたね・・・・でもアタシの冗談を本気にする位信じてくれていると思うと何だか凄く嬉しいんですけど。

その表情がそのまま出ていたのか、真っ赤な顔をさ

らに赤くして「気付くの遅いんだよ、馬鹿」と。

「じゃあ代わりに今日、昨日分も甘えさせてあげるって言うのはどうスか?」

頬に手を添えて至近距離でそう呟くと呆気にとられた顔をした後、

少し恥ずかしそうに頭を下に傾けながら是と頷いた。




fin.2005.10.16


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