話
□涙の日常
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涙の日常
いつものようにあいつの顔を見るためだけに寄り道して、いつものように中身がない話をし、
あいつのペースにはまり、抱きしめられキスをされた。
それだけ。
なのに涙がなぜか溢れた。
とめどなく。
泣く理由なんてないのに。
相手はその涙をそっと拭いとり、当然な言葉を口に出した。
どうしたの?
わからない、自分でもわからない。さっきまでの行動の中で何が自分を涙に誘ったのか。
いつもの店、大好きな人…
そのままわからないと答えると、不思議そうな顔をした後目を細め、笑みを深める。
泣くほど幸せ?
一瞬意味がわからなかった。
訳すとつまり
嬉泣き。
大好きな人に抱きしめられキスまでもらいそれが嬉しかった、けれど自覚がない。
だから涙が出ても何の涙なのか自分でもわからない。
ある意味これも反射行動の一つかなんて節から外れたことを頭の中で考え、
そんな言葉を恥ずかしげもなく言った相手の顔をまじまじと見る。
随分と上機嫌のようだ。
顔が緩んでいる。少しは抑えると言うことはしないのか。
でも実際浦原が言った言葉は正しいのだろう。段々と自分でも理解してきた。顔が熱い。
その顔を見てさらに満足げな顔に変わる。
どんどん顔が真っ赤になっていくのがわかったので男の胸に赤くなった顔を埋めた。
優しく髪を透かれ、背中に腕を回すと強く抱きすくめられた。
ほどなくしてまたあの涙はやってきた。