□春待ち苺st5
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春待ち苺 st.5




目が覚めると隣にいるはずの男がおらず、また夢だったのかと不安に駆られる。

しかしその不安も杞憂に終わり、襖が開く。

「一護サン、起きたンスか?」

「うん…おはよう浦原」

「良かった、また起きなくなったらどうしようかと少し思ったンスよ」

「・・・そういえば俺どの位目覚めなかったんだ?」

「約二週間、ッスね」

「そう、か………あ!お前傷は?怪我は!?」

見た目すっかり元気に見えるがもしかしたらまだ治ってないかもしれない。

「ああ、アタシの傷はテッサイ達が治してくれましたから全然平気ッス、もう完治してますよ」

「そ…っか、良かった…ほんとに」

「だってもし治ってなかったら昨日、ねぇ?」

「!ば、ばかっ…」

「あ、そうそうあのとき救急車まで来ちゃったんスよー、勿論記憶置換使ったんですけどね」

あはははと笑い話のように話す浦原に相槌も打てずにただただ傾いていると、

そっと男の手が髪に触れ、優しく梳き

「一護サン…アタシは大丈夫だから。そう簡単には死にませんよ」

「…だからもうそんなに気に病まないで」

優しい言葉に視界が揺れながらも

「でも…」


やっぱり俺のせいでしなくてもいい傷を負って、申し訳なくて。



「一護サン」

「…?」

「アタシは絶対君の前から消えたりしないから」


約束。


そう言って指を差し出してくる浦原をそっと見上げると俺にしか見せない本物の笑顔。


差し出された指に自分のそれを繋ぐと、ゆびきりげんまんと歌い出し、指きったまできっちり歌い上げ、

「はい、これでもう死ねません。」

と笑顔で告げた後此方を何か企む瞳で見つめながら

「一護サンも同じように指切りしたからいなくなっちゃダメッスよ?」

「…ッ、いなくなるわけないだろ」

それだけ言うのが精一杯で後は言葉にならなかった。


「ぅ…っふぇ」


そんな俺の背中を浦原は落ち着くまでずっとさすってくれた。

暫くして泣き疲れて寝てしまった俺を浦原は愛おしそうに見つめながら








「帰って来てくれて有り難う御座います、一護サン」






そっと額にキスをしていたのを一護は知らない。









春はもうすぐ。










でも、もう春を待つ必要はない。




fin.2006.2.20


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