□3日前の二人
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三日前の二人。

雑貨店を通り過ぎると大体もうきらきらと光るイルミネーションがお店全体を
明るく照らし、イベントが来る日を待っている。当日は同じものがどこかで
同じように光っているかもしれない。

そんなイベントも後3日でやってくる。そして自分は約束をするために
歩いている。

寒くなってきたと感じた後は早く、気がつけばマフラーやコートがないと
風吹きすさぶ外を出歩く事が不可能(自分にとっては)になってしまっていた。

完全防寒して光る道を過ぎ、向かう先は雑貨店といえばそうかもしれないが
先程見たお店の中とは似ても似つかない。中に入ると年中同じものしか置いてなく、
(少なくとも自分からは変わったようには見えないから)角の方に置いてあるものは
埃が被ってしまっている可哀想な商品もある。
そんな状況を客観的に(ちょっとさっきと比べつつ)眺めていたら、
今気がついたかのようにわざとらしく店主が声をかけてきた。

「オヤ、黒崎サンこんにちは」
「ちわ…」
「どうしたんスか?元気ない」
「元気だよ、ただ…」
「ただ?」
「その、お願いがあってさ」
珍しい事もあるものだ。
「黒崎サンの為ならどんなお願いでも叶えまスよん


さぁさぁと促され
「うん、それじゃあ24日って暇?」
「24日スか?ええ、もちろん暇ッスよ」
「その1日欲しいんだけど」
浦原の1日、丸々頂戴。
「いいッスよ、喜んで」
「…ありがと」
あえて何でとは聞いてこない浦原に、もしかして知っているのだろうかと一瞬
考えたけれど知っているようには見えない。知っていたらまず、プレゼントは何が
いいかとか絶対聞いてくるはずだ。
よくよく見ると始めに俺を心配した浦原の方が疲れているように見えた。
また研究に没頭し過ぎたのだろうか、目の周りはうっすら黒い。

「浦原ー」
「ん〜何です?」
「ほら、こっち」
浦原の横を通り過ぎて、先に少し奥に入り縁側に腰を下ろした後、呼ぶ。
ただ寝ろと言ってもこの男はあまり寝ようとしない。特に研究中は。だからこう
いうときは自分があまり普段することはない行動をすると落ちてくれる。

のそのそとこちらへきた浦原は俺の指し示す場所を見て目を少し見開いた。

「え…膝枕?」

ぽんぽんと叩いたのは膝。寝ろと無言で訴えかければ予想通り落ちてきた。

「わ〜黒崎サンが膝枕なんてしてくれるなんて幸せッスねアタシ…じゃ、じゃあ遠慮なく」

そう言って嬉し

そうな顔をしたまますぐに眠ってしまった。

後でテッサイさんに聞いてみたら3日くらい寝てなかったんだとか。お礼を言わ
れてしまった。全く、家族に心配かけるなっと起きない程度にほっぺをつねっておいた。
門限ぎりぎりまで膝枕をさせてやり、暫くしてやってきたテッサイさんが膝枕から
ちゃんと布団に寝かせたのを見届けてから家に帰った。

家に帰ってからさっきの自分が取り付けた約束を反芻して、今頃恥ずかしくなったりする。
3日後3日後。頭の中はそれでいっぱい。冬休みの短さに反した量の宿題を
片付けなければならないのに、特に浦原となるべく長く一緒にいたいと思っているので早めに
終えてしまいたいのに、イベントの影響が強すぎて公式だとか年号だとか頭に入っていかない。
今日はもう無理だと仕方なく諦めて布団に潜った。横になると月がよく見える。
何だか浦原に見守られているようでひどく安心した。

クリスマスまであと2日。考えたらプレゼントを用意してなかった。どうしよう。


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