□2日前の二人st.2
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二日前の二人 st2

家に着くと浦原はまたUターンしようとしたのでとっさに羽織を掴むと「顔を見たかっただけッスから」と。
でもせっかくここまで来てもらったし、まだもう少し話したいし。

そんな気持ちが羽織をつかむ手、もしくは表情に表れていたのか浦原はじゃあ少しだけと
俺の部屋に軽い足取りで一階から飛んですんなり入っていった。

二階に上がり、部屋を開けると浦原はベッドの上で寝ころびながら近くにあった
服とか雑貨とか載ってる雑誌をぱらぱらとめくっていた。

「黒崎サンは何が好きなんスかね〜あ、誰じゃなくて何がですよー」

と馬鹿なことばかり紡ぎウフフと気持ち悪く笑うので持ってきたトレイを思いっきり顔面にぶち当てて黙らせた。
それでも愛が痛い〜とか何とかまだ言っていたのでトレイを投げた。

「24日なんだけどさ、どっか出かけないか」
その言葉に、めくっていた本から視線を外し、悪戯でもするような顔をこちらに向けると
「オヤ、それはデートに誘ってるんスかね」
いつもの意地悪。でも今日は本気なんだ。
「…ッ、そうだよっ」
「え」
「何だよ、そんなに珍しいか!」

予想通りぽかんとふぬけた顔してこちらを見つめる男に照

れ隠しの為怒鳴ると、
手が伸びてきてすぐさまぎゅーっと抱きしめられた。

「うわーうわーそんな言葉黒崎サンに言われる日が来るなんて、
どうしよう嬉しい、テッサーイ!黒崎サンがねー!…痛いッ」

「余計なことをいちいち報告するなっ」

精一杯突っ張り何とか腕の中から逃れると一人世界に入っていく浦原。

「う〜だって黒崎サンが誘い文句を言ってくれる事なんてこの先あるかどうか…
あ〜やっぱり誰かにこの喜びを伝えたい自慢したい、あ!夜一サンいいところに!
実はね黒崎サンが、え?どうでもいい?イヤイヤそう言わず、とっても珍しい事なんですって。
ミルク飲むついでに聞いて下さいよ、ね?ね?」

「いい加減にしろ!」

仁王立ちで怒りのオーラをこれでもかと漂わせている子供にやっと気がつくが、
まだぶーたれている様子。どうしても誰かにこの気持ちを告げないと気がすまないらしい。
全くこれがほんとに彼の地で冷徹やら天才やら言われていた隊長様なのか
今でもほんとに信じられない。昔の彼を知る人たちに今のこの惨状を見せてやりたい。
まぁ、強さは認めるけど。
卍解出来るようになった今も未だに勝てないし。
やっぱり経験が違うんだなぁとつくづ

く思う。
だって相手は卍解すらしてないし。
俺の卍解はまだ完璧じゃないからだろうけど。

あ〜もっと強くなりたい。そんでもってもっと多くの人を護りたい。
そしていつか浦原を護れるようになるくらい強くなりたい。
と、ついつい頭の中で話が逸れていくのに気が付き、原因の男に視線を戻すと、
騒がしくしていたはずなのに何時の間にか夜一さんは既にいなく、静かに浦原は
こちらを見つめていた。

「なっ何?」

「黒崎サン今何考えてたんスか?上の空で」

怒ったかと思えばすぐに勢いは止まりそのまま思考に耽った子。これだけ生きて
きたアタシでもこの子の考えていることは予想できない。

「いや、えっと強くなりたいって事を考えてた?」
「何で疑問系なんスか、アタシに聞いてもわかんないスよー?キミの考えてる事なんて」
くすくすと笑われて、少し顔を赤くし、だって、とかう〜とか言葉にならない声を出している。

やっと発した言葉は
「だってお前いつも俺が思ってること当てられるじゃねぇか」

だって。

「まぁ大体いつもは黒崎サンの表情と話の流れでわかったりはしますけどね、
今の場合突然表情なくして真剣に考えに没頭されたらアタシだってわかり

ませんよ」
「そうか…じゃあいつもこんな感じで考えればいいのか、ん?こんな感じってど
んなだ、どんなだった?」
「それ言っちゃったら黒崎サンが考えてることわかんなくなっちゃうからやだ」

やだって…。

「わからなくていいのっ」
いつもいつも考えてることすぐにばれてその後やけで言った言葉が墓穴を掘り、
それが浦原を喜ばせてしまう。浦原が喜んでくれることはいいことだと思うけど
殆ど自分にとっては恥ずかしくいたたまれなくなったりすることばかりだから困
る。


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