□二日前〜一日前の二人
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二日前〜一日前の二人

「ったく、もういい、それより24日…」

「そうッスねー…どこか行きたいところある?」

その答えには返事せずに鞄をガサゴソしだしはじめた一護を訝しむと

「あった!」と嬉しそうな表情を浮かべてこちらをキラキラさせた瞳で差し出すものは紙切れ2枚。

「ん?これは…映画のチケット?」

「実は水色が付き合いのある人からチケットを貰って、でも見に行く暇がないらしくて、
もしよかったらってことで貰ったんだ」

一護さんからよく水色君の話を聞きますけど、何だか凄い世渡り上手な子に

聞こえますねぇ。実際そうなのだろうけど。その付き合いのある人って一体何人いるのやら。

チケットを受け取りよくよく見るとどうやらラブストーリーっぽいようだ。

黒崎サンはさっきからそわそわしている、顔が赤い。

そうか、内容をちょっとは知ってるんだ。

「じゃ、これを見に24日は行きましょっか」

アタシがそういうとぱっと顔をあげて本当に嬉しそうに頷いた。

傍目から見てすぐわかる上機嫌になった子。可愛いなぁと目を細めて見つめた。

「浦原はどっか行きたいところとかないのか?」

「アタシは黒崎サンと行く場所なら

どこでもいいですから」

さらりとこういう台詞をぽろっと吐けるこの男を憎いと思う反面嬉しい。

「あ、そ」

照れ隠しに半目でその言葉を一蹴しておく。ばればれだとは思うけど。

「さて、そろそろ帰りますね」

「あ…うん…」

あからさまに寂しそうな表情をする一護に、にっこりと微笑みぎゅっと抱きしめると、

恐る恐る一護も浦原の背中に腕を回した。

「で、さ、明日…なんだけどさ」

「明日?」

「ちょっと店には行けないと思うんだ」

「そう…」

表情は見えないけれど恐らく眉間の皺は3割増くらいにはなっているだろう。

「明後日楽しみにしていますよ」

耳元にそう囁けば赤い耳はさらに赤みを増した。



*



クリスマス1日前はうるさいくらいの友人たちに誘われてうちで

パーティーをすることになっていた。何で1日前かというと、

水色がクリスマスに予定があるからだ。

(お姉さんたちと過ごすのだろう)

「この裏切り者のおかげで早まったクリスマスパーティーではあるが!思う存分楽しむぞー!!」

泣きながら半分嫌みの入った宴の始まりを啓吾が叫ぶと、みんなそれぞれに楽しみはじめた。

遊子がよりをかけて作っ

た料理は瞬く間になくなっていき、

たまに親父が入ってこようとしたが、診察がまだ残っているはずだから無理矢理追い出した。

「一護ォ〜お前だけだ同士は!」

お酒なんてどこにもないのに何故か酔っ払っているような様子の啓吾。

どうやら周りはみんなカップルなり幸せなクリスマスを過ごすけれど

俺と啓吾はそうではないといいたい(信じたい)らしい。

「残念ながら同士ではないのでありました〜ちゃんちゃん♪」

横から割って入った水色の言葉に敏感に反応し、水色を睨んだ後

そのまま俺に向きなおる啓吾。

「ま、まさか…!お前も裏切り者なんてことはないよな一護!

俺と明日は一緒に友情を深めるんだよな!」

縋るような目で見つめてくる啓吾を見つめかえすのは何だか心苦しくなってきて、

ついふ、と視線をずらすと大変ショックを受けたらしい。

何事か叫んだ後、部屋の奥で重いオーラを背負い沈んでいる。

「一護ってほんと嘘つけないよね」

「…ッ」

「まぁ明日は楽しみなよ、啓吾は大丈夫、ゲームがあるから」

「ゲームじゃ俺の心は満たされない…」

聞いていたらしい啓吾が奥からぼそりと呟いた。

啓吾には悪いことをしたと思う

けれど、こればかりは譲れない。


明日は大切な日だから。


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