□クリスマス当日の二人2
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クリスマス当日の二人 st.2


(カップルばっかり、俺達ってどう見えるんだろ…)

「黒崎サン?入らないの?」

「あ、入る」




中に入ると外の寒さは微塵も感じさせず寧ろ暫くいると暑くなってくるほど。

パンフレットと飲み物とポップコーンを買い、いい席は

殆ど座られていたので、一番後ろの席に座る。


何気なくパンフレットを眺めていると、視線を感じて顔を上げた。

「何?」

「いえ、嬉しそうで何よりだなぁと思いまして」

「ま、まぁ見たかった映画だったし…」

あまりにも綺麗な笑顔だったので気恥ずかしくなって俯きながら答えた。

「あ、あんまり俯かないでくださいね」

「え、何で?」

「黒崎サンの幸せそうな表情が見えなくなっちゃうでしょ?」

「ば…っか」


恥ずかしいことばかり言って惑わす言葉の数々。

どれだけ振り回したら気が済むんだろう。

熱くなった顔をどうやってごまかすかいつも困るんだから。



映画が始まるとのめり込むように話に入っていき、
最後の方は涙がぼろぼろ溢れて止まらなくなる。

その様子を映画も観ずにじっと大好きな男に見られていたのにも気付かずに。



(ほんと可愛

いなぁ)

いたずらしたくなっちゃう、と思いながら、映画に夢中な子を終わるまで見つめていた。




「面白かったな」

「ええ、そうですねぇ」

黒崎サンの顔を見てるのが面白かった、ですけど。百面相なんですもん。

「そろそろ腹減らないか?」

「そッスね、ご飯にしましょうか」

うきうきしながらレストラン街へと先を急ぐ一護からはぐれないように追いかけた。



一護はアイスティーとオムハヤシとケーキのセットを注文し、

自分はコーヒーとサンドイッチとケーキのセットを注文した。

「黒崎サン、もう少し落ち着いて食べて大丈夫ッスよ、ほら口の周りに付いてる」

既にご飯は食べ終わり、ケーキに取りかかっていた一護の頬をそっと撫でた。

「え」

「はい、取れた」

「な…だからっ、も、…ったく!」

驚いたかと思えば怒り、そして諦めところころよく変わる子だ。

とことんまで自分を甘やかす男。いつか自分の意志で立てなくなるんじゃないかと

思うくらい甘くて全てが甘くて、それが嬉しくて、でもうまく伝えられなくて歯痒い。

今日は絶対に伝えよう。言い訳はなしで、素直に。

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