□大晦日の二人
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大晦日の二人



「今日も泊まりか!すっかり不良少年の仲間入りだな!」

「声でけーよ!」

「して、次はいつ帰ってくるんだプチ家出息子よ」

「元旦の朝には…」

「ほう、二言はないな!?」

「だからいちいち声でけーっつーの!」

玄関前で30日の夜中こんな親子の会話をしているのも
こっそり家を出ようとしたら
一番厄介な奴にばれてしまったから。


「まぁ初詣に行く時間には間に合うように帰ってこいよ、遊子が寂しがるからな」

「…おぅ」

がしがしと頭を撫でられ、ま、楽しんでこいと笑って見送られた。




「あー…しまった」

店の前に着くと、シャッターがばっちり閉まっていてとても入れそうにない。

相手には今日行くとは伝えていない。脅かそうと思って。でも肝心なことを忘れていた。


「どこから入ろ…」

「お困りデスか?」

「ぅわ!な…っ浦原?」

「何か大好きな子の霊圧が近づいてくるなぁと思って出てきてみたら入口でぽつんといるんですもん」

垂れ流しの純粋な霊圧。間違えようもない。

「どーしたんスか、こんな夜中に」

「いや、その…泊まりに来た」

「ハイ?」




立ち話はこの季節するもの

ではない、夜なら尚更。

中に入り、浦原が暖かいお茶を用意してくれた。

「サンキュ」

「熱いから気を付けてくたさいね」

「おぅ、…ッ!」

「だから言ったのに」

軽くクスリと笑えば、じとと上目で睨まれた。それをさらと流し、少し零れたお茶を拭いた。

「あ、ごめん」

「いいんスよ、それよりどうしたんですか、こんな夜中に」

「それは…あ」

「ん?」

カチリと時計の針が12を指し、12時を告げる音が響く。

「浦原…誕生日おめでと」

「オヤ、覚えてくれてたんスね」

アタシが忘れてました、なんて笑う浦原につられて笑う。

「え…てまさかそれを言いに来てくれたの?」

恥ずかしながらも頷き、

「親父には今日泊まるって言ってるから…」

「じゃあもしかして今日1日傍にいてくれるの?」

顔を赤くして肯定すれば、浦原の香りに包まれる。

「クリスマスも嬉しかったけど今も嬉しいことしてくれちゃって」

「何もしてない…」

「ここに来てくれることだけでアタシにとっては十分嬉しい事ですよ、その上大切な大晦日に1日傍にいてくれるなんて」

「お前の誕生日くらい一緒にいたい、し」

誕生日なんて今までそんなに

重要なイベントと思ったことはなかったけど、

今年からは違うものになってしまいましたね、黒崎サンのおかげで。


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