□降り続く雨(御題
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降り続く雨



梅雨が始まり必然的に空から降ってくる水。

それでも今日は朝から太陽が覘いていた。

その上天気予報を告げるお姉さんの口からはしっかりと晴れという言葉、

安定して珍しく傘は必要にならないでしょうということだった。

その言葉を信じて、持たずに出たというのに。昼頃から雲行きは怪しくなり、

太陽もいつの間にか灰色の雲に覆われて見えなくなり
見事帰る時にはいつも通りの梅雨。

それもどしゃ降りのおまけつき。

もうあの天気予報は信じるものかと頭の中で悪態をつきながら

この雨の中どうやって帰ろうかと思考する。

チャドは今日はわけあって学校を休み

(理由はなんでも誰かさんがやっと休暇を手に入れたので

今日こそはゆっくり二人でいたいんだとか)、

水色と啓吾は気が付いたら教室からいなくて、石田は部活で。

こんな薄暗い空なんて見たくないから一刻も早く帰りたい、と思うのだが

どうしようもない、と考えはまた振り出しに戻る。



面倒だ。



ふと考えることを放棄し下駄箱から一歩外へ。

自然、体は重くなる、けれど気にせずさらに一歩。

これを繰り返していればいずれは家に帰れる。

ちょっと

寒いけど帰ったら即お風呂に入ればいい。

少なくとも下駄箱と外の境界線で悶々と考えに耽るよりはましだ。


余計なことも考えてしまうし。


ある通りに差し掛かったところで足が止まる。

でも、今行ったらきっと怒られる。

いや、そんなことより行ってはだめだ、行ってはだめだ。

足を向ければ・・・・・。

言い聞かせながら止めた足を無理矢理動かした。



「ウチには寄ってくれないんですか?黒崎サン」



引き摺る足を動かしてその通りを過ぎようとしたとき
後ろから声がかかった。



「・・・・・うら、はら」

「少し寄っていきませんか?・・・・ね?」

にこりと微笑む姿は一見してみたらただの親切。

しかし素性を知るものからしてみたらそれは有無を言わさない脅迫に近い。


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