02

□前髪
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「ねえ、」

煩わしそうに何度も前髪を触るテツ。

「何?」

「前髪、邪魔くさいなら上げちゃえば?」


そしたらテツ、少し黙って考えて。

「やだ」

と一言。


「何で?」

「好きやないねん。前髪上げんの…」


確かにテツが前髪を上げた姿って、一度も見た事なかったかも。

あ。
自信がない、だっけ。
前に何かの雑誌でテツがそう言ってたの見たような気がする。


「でも、邪魔じゃない?」

いいじゃない。
たまには自信持ってさ。
あたしの前だし。


「邪魔…やけど」

「じゃあ決まり」

そう言って、無理矢理テツの前髪をピンでとめた。
また可愛らしいこと!


「…変やない?」

「全然平気。あ、でも他ではやらないでね?」

「何で?」

「他の人にはその姿見せたくないから」


勿体ないよ。
こんな可愛いテツを独り占めしないなんてさっ。


今度はファンシーなピンでもつけてみよ(笑)


複雑そうな彼と。
笑顔のあたし。




●fin●

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