【SD+】

□april×birthday
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ぽかぽか気持ちいい、ある春の日。
屋上でひなたぼっこをしていると……


「お〜い、ミッチー!!」


まさに、春の陽気そのものみてぇな奴がやってきた。
扉を勢いよく開け、こちらまで全速力で駆けてくる。


「あぁ?」


ぶっきらぼうに返したオレを、全く気にしない様子で。
そいつは、眩しいほどの笑顔で口を開いた。


「今日何の日だ〜!!?」








【april×birthday】









「いきなり何だよ、桜木。」


やっぱりな……

オレは、心の中でそう呟く。
イベント好きなヤツだし、そろそろ来るだろうって思っていたけれど。


「ぬ?そんなヒナタで、体力回復か??もっと盛り上がれ、ミッチー!」

「って、オレはソーラー式か。」


日光で体力温存できるなら、もっと浴びてるっつの。


オレが呆れてる間も、桜木はキラキラした眼差しを此方に向けている。


「あー……。で、何だっけ?」

「だーかーらぁ!今日は何の日なんだ??」


ほんとスゲーな、その顔。
なんか、アレだ。
遠足前のガキみてぇ。


「今日?……あ。」

「おぉっ、やっと分かったか!?」


そう言って、嬉しそうに声を弾ませる桜木。
オレはそっと立ち上がり、目の前の桜木を引っ張った。


そして






「桜木」


掠めるように、キスをひとつ。


「!?み、みっ……」


「大好きだぜ。」


唇を離して囁けば

桜木は、みるみるうちに頬を染めた。

いつまでたっても慣れねぇよな。ま、そんなとこもカワイイけど。
――なんてことは、心の内に秘めておいて。
ニカッと笑って、言葉を続けた。


「冗談。今日、エイプリルフールだろ?」

「!」


その途端、桜木は何ともいえねぇ顔をした。
落胆したような、驚いたような……
複雑ですって、顔に書いてあるかんじ。

ほんと、コロコロ表情が変わるヤツだな。


ずっと見ていたい、
もっと色んな表情を見せて、
オレだけに。


「うーそ。んな顔すんなよ、嘘だから!」

「ほ、ほんとか?オレ、ちょっと傷ついたぞ。」


なんて言って、
桜木は少し困ったように笑った。




ほんとだよ。
大好きな奴が生まれた日に、
嘘なんて吐くわけねーじゃん。

だからさっきのだって、心からの言葉。……喜べよな。


「誕生日おめでと、桜木。」









「……?なんか言ったか、ミッチー。」


小さく呟いたオレの言葉は、吹きすさぶ春風に飛ばされて。


「いや、何でもねぇ。」


そう言って、オレは再び腰を下ろした。


「あ、桜木ィ。帰りはコンビニ寄ってこーぜ。」

「お?いいなぁ、行くぞ!」

「おぅ。特別に何か奢ってやるよ。」

「えっ!?ほんとか、ミッチー!」


“やったぁ!!”両手を振り上げて、桜木は無邪気に微笑む。


「もちろん200円までな。」

「えぇ?ケチー!!」


今度はがっくりと肩を落としたが、その表情はやはりキラキラと輝いていて。


自分の誕生日をアピールしに来たんだろうに……
桜木は、すっかり忘れちまったみてえ。

だから
帰り道には、もっとちゃんと言ってやろーかな。





“生まれてきてくれて、
オレに出会ってくれて、
ありがとう”ってさ。













・END・
→あとがき。
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