【SD+】

□願い事ひとつだけ
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もしも
三井サンが織り姫サマで、オレが彦星だったら……

きっとオレは、天の川を泳いで渡るだろうな。
そうやってアンタに会いに行く。

きっとオレは、天の川を跳び越えるだろうな。
そうやってアンタを攫いに行く。


なんて言ったら、やっぱアンタは笑うかな?
物理的に無理だとか、頭大丈夫かとか。
……あ、後者の場合ちょっと傷付く。


でも今日くらいさ、そっと頷いてよ。


だって
今日は年に1度の――









【願い事ひとつだけ】









夕焼け、祭りばやし、虫の声。
そして――


「みっついさぁぁん!あー、あと宮城」

「……ゲッ」


にこにこしながら、こっちへ駆け寄ってくるタレ目ヤロウ。

あー、ヤな奴に見つかっちまった。
っつか、ンだよその呼び方は。ケンカ売ってんのか?


「おっ、仙道じゃねーか。偶然だな」

「あれェ何も見えない、聞こえない。さ、行こっか三井サン!」

「……やだなぁ、そんな嫌がんないでよ宮城」


するりと背を向けて歩き出せば、行かせまいと三井サンの腕を掴む仙道。
その顔には、相変わらず穏やかな笑みがたたえられていて。

気安い手を振り払い、オレは不敵な笑みで応戦。

コイツを、三井サンに近付けたくない。


「ワリィな仙道。オレら、これからお祭りデートなの」

「なっ、宮城!!」


部活帰り、偶然見つけた神社の縁日。
“七夕にやるなんてベタだよな〜”そう笑いあって、でも単純に心躍って。
ふたりで神社の階段を上りかけた
まさにその時……

オレの恋路を邪魔してくれちゃう、ハリネズミが現れたワケで。


「楽しそうだなー、オレも混ぜてよ。あっ三井さん、何か食いません?奢りますよ」

ハァ?

「……オレ、わたあめ食いてぇ」

っみ、三井サン!?

「決まり。じゃあ行きましょっか」

「ちょっ待、……」


悲しきかな。
仙道に大人しく手を引かれ、階段を上っていく三井サン。

クソッ
仙道のヤツ、なに食いモンで釣ってんだ!
っつか三井サン、アンタもなに食いモンで釣られてんだ!!

ひとり打ちひしがれてれば、階段の中ほどから“早く来いよ”なんて声を弾ませるマイハニー。

オレは速攻のスティールを心に誓い、慌ててふたりを追い掛けた。
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