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□First LOVE!41.変わらないもの
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「テスト期間はみんな帰るのが早いね」
放課後の教室に声が響きわたる。周りを見渡せば私、宍戸、ジローのいつもメンバーしかおらずあとのクラスのみんなは早々に帰ってしまったようだ。
「いくら中学最後のテストつってもウチはエスカレーター式だからな」
「そうそう!勉強しなくても高校行けるC」
「今頃遊んでんじゃねぇの?」
「真面目に勉強してるとすれば…別の高校に受験する人くらい?」
だよなぁ、なんてまた二人の笑い声が教室に響く。なんだ。みんなにとってはそんなものか。ひとつのクラスに2、3人は必ずいる別の学校を受験する人。きっとその人たちにしてみれば思い入れも強いテストだろうに。
「ジローは氷帝で良かったね」
「なんで?」
「たしかに。受験勉強してるジローなんて考えらんねぇよな!」
バカにしすぎ!なんて怒られてしまったがそれでも宍戸と一緒に笑っていた。するとつられたのか怒っていたはずのジローも笑い出す。
そういえば去年も放課後にみんなで残ってくだらない話をしながら笑っていた。目に映る世界が変わっても、変わらないものがあるんだと今なら信じられる。いや、信じたかった。
「…もうそろそろ帰るか」
時計を見るともう夕方と呼ぶにはふさわしい時間。同じく時計を見ていたジローは店番頼まれてたの忘れてたっと慌てて走り去ってしまった。
「あの、さっ!」
「ど、どした?」
いきなり二人きりになり静さを吹き飛ばすように宍戸が口を開く。それに少し驚いてしまったがすぐに固まってしまった。そういえばこのくすぐったいような空気も久しぶりだ。
「…手、繋いでいいか?」
そう言いながら右手で顔が見えないように覆っていたけど、きっと真っ赤だったんだよね。返事をするより先に宍戸の余っている手を繋ぐ。すると自分の熱以外に暖かさが加わり、一層と自分の右手が愛しく思えた。
変わらないもの
(宍戸の出す空気もあの不器用さも変わってない)
(それが愛しくて仕方ないんだ)