□First LOVE!43.大好きでした
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久しぶりの屋上は少し風が厳しく、だけど時折優しい風が吹く場所へと変わっていた。これからくる季節を少しずつ運んでいるんだ。

ここからすべてが始まった。
宍戸に言われ桜を見に来て、ジローや岳人や跡部くんを交えてポーカーもやった。テニスの試合も観に行ったし、そしてなにより。

「宍戸に恋をした…」

口に出してみれば簡単なこと。けれども宍戸のことを考えるだけで胸は暖かくなるし自然と笑顔になってしまう。きっとこれを幸せと呼ぶんだろうな。

分かってる。何百人もの人の中でひとりと出逢ってその人だけに恋をして。その人もまた私のことをそんな風に想ってくれているなんて奇跡に近いこと。そしてそんな日々が続いているのが幸せだということくらい、分かっている。
だから、もういいんだ。私は十分幸せなんだ。

携帯電話の送信ボックスにずっとしまってあった未送信のメールを開く。と同時に大きく息を吐き出し、今まで押せなかった送信ボタンをひとつ押した。

「…さよなら、宍戸」

送信完了しましたの画面を確認すると、涙はひとつと言わずその後何時間も私の頬を濡らし続けた。




大好きでした
(誰よりも誰よりもあなたのことが)





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