□First LOVE!49.思い出の荷造り
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「まだ日にちはあるのよ?」
「いいよ、今日片付ける」

みんなと解散してから家に着くころにはとても綺麗な夕日が見えた。こんなに綺麗な夕日は夏休みのあの日以来だ。そんな夕日を見ながら私は部屋にある荷物をダンボールの中に並べていく。

「…引っ越しは、来週なんだから」

母親には荷物になるだけだと言われたが教科書やノートは引っ越し先に持って行くことにした。机の上にあるそれらを動かしたとにひらりと舞い落ちた白い紙。いや、写真だ。

「宍戸‥」

幼い頃の私たちと少し前の私たちが写っている2枚の写真。少し照れくさそうに笑う宍戸と目が合いふいに胸が熱くなる。忘れていた気持ち、忘れようとしていた気持ち。

小さなファイルを取り出してそれらをしまい、ダンボールにこっそりと入れた。もう終わった話でしょうと言われてしまえばそれまでだ。しかし、思い出くらいは持って行ってもいいでしょう?と誰に言うわけでなく心で笑う。
まだきみを想って泣いていたいんだ。

明日で長かった私の恋も中学校生活も終わってしまうのだろうな。気付けば夕日は沈みわずかな星が瞬いていた。

明日はすぐそこだ。





思い出の荷造り
(明日ですべてが終わる)
(さみしい、けれどありがとう)





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