□First LOVE!50.卒業式
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いつもの時間に家を出て友達と挨拶を交わしながら席につく。チャイムが鳴っているのにジローの姿が見当たらない。と思った瞬間慌ただしく教室に登場した。いつもと変わらない朝なのにすべてのものが輝いて見える。

そうだ、今日は卒業式だ。


拍手に包まれながら登場したときも、着席していたときも卒業だなんてまるで他人ごとのような気がしてならなかった。
ただ、跡部くんが私たちの代表として今までの3年間を振り返りながらお礼の挨拶をしていたときと、卒業生として宍戸やジローの名前を呼ばれたときにだけ実感した。いよいよ別れの時間が近づいている。

「卒業おめでとう。進学しても、いつでも遊びに来ていいからな」

では、解散。と力強い担任の言葉が胸に刺さる。ちょっと期待していた卒業式後の最後のホームルームはあっけなく終わった。
一斉に椅子から立ち上がりクラスみんなが笑顔で写真撮影を始めているのを横目に見ながら、私の足は無意識に、でも確実にあの場所へと向かっていた。

「…意外と、誰もいないんだ」

キィ、とドアを開ければもう見慣れすぎた景色が目に飛び込んでくる。いつもの屋上のフェンスにもたれながら空を見上げた。と、同時に無心でシャッターを切る。卒業式の日の空はこんなにも綺麗だったんだよって忘れたくなかったんだ。

失笑気味に笑っていると正門付近から声が聞こえ出す。いつもの氷帝コール、テニス部か。ここから見えるほど人の山が出来ているけれどあの真ん中で一人立ち振る舞っているのは跡部くんに違いない。これも記念だとシャッターを切るときに後ろのドアが開く音がした。


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