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□First LOVE!50.卒業式
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「卒業、おめでとう」
その声に勢いよく振り向くと目に飛び込んできたのは、紛れもなくあそこにいるはずであろうと思われていたテニス部の。
「あー、あれ跡部か?ったく、最後まで騒がしくしやがって」
「なんで…」
「ん?」
「なんでっ宍戸が、ここにいるの?」
「‥なんでだろうな」
久しぶりに交わした会話は可愛くないものになってしまった。それでもおかまいなしにゆっくりと私の隣に来て同じようにフェンスにもたれかかる。
「行かなくていいの?」
「‥卒業式まであんな激ダサなこと出来ねえよ」
「あは、たしかに」
だろ?と宍戸が少し笑う。それにつられて私も微笑んだところで思い知らされる。きっとこの先誰と付き合っても宍戸のことを思い出すな。そう思えるくらい私の大好きな人。
「じゃあ、そろそろ行くな」
「えっ」
「後で跡部にバレても嫌だしよ」
うん、なんて素直に言えない。あんなに決心したじゃないか。幸せに、なってもらいたいんだ。離れて行く私なんかじゃなくて、近くで支えてくれる可愛いらしい人と一緒に。
「じゃあな」
隣にいたはずの宍戸はいつの間にか背を向け片手をヒラヒラさせていた。
涙が出るのは我慢していた。本当に最後だからこそその姿を目に焼き付けたくて、でも思い通りにはいかずに静かに目を伏せる。一筋涙が頬をつたったが静かに、声には出さずに。
さようなら。